「特例が特例でなくなっている」第3回滋賀県税制審議会(2019年11月)議事概要を読む
- 喜多G13

- 2 日前
- 読了時間: 6分

2019年11月15日、第3回滋賀県税制審議会が開催されました。今回は井手委員、佐藤副会長、松田委員が欠席し、出席は川勝委員、勢一委員、諸富会長の3名のみ。欠席委員は書面で意見を提出しています。議題は、法人県民税法人税割の超過課税・不均一課税に関する答申案の審議と、新たな諮問事項である琵琶湖森林づくり県民税の議論開始の二本立てでした。
答申案の審議――40年続いた「特例」への問題提起
法人税割の超過課税と中小法人への不均一課税について、事務局が前回の議論を踏まえた答申案を提示しました。各委員とも答申案の方向性に賛同しつつ、重要な指摘が相次ぎました。
川勝委員は、不均一課税が地方税法上「公益上その他の事由に因り必要がある場合」に限って認められる特例措置であることに立ち返り、「創設当時は必要と認められると判断してきたと思うが、現状においても必要と認められるかどうかという判断をまずした上で見直しが必要」と述べました。40年以上も続く中小企業保護の名目が、果たして今も県全体の公益に適うのか、検証がなされるべきだという問題意識です。
勢一委員はさらに端的に、「特例が特例になっていないというか、特例と思われていないという状況は問題がある」と指摘しました。中小企業側がこの措置を当然のものと認識している現状を正面から問題視した発言です。
答申案の文言自体に大きな修正はなく、最終的な文案は会長一任となりました。ただし、制度の本来の趣旨や経緯を示す背景資料を添付することが決まっています。川勝委員の「答申文だけだと負担増の部分だけがクローズアップされ、議論が集中してしまう」という懸念に対応したものです。
書面参加の佐藤副会長は、答申案に概ね賛同しつつも「地元経済界・経済団体には彼等の意向があまり反映されていないとすれば、一層、慎重を期するべき」と釘を刺しています。前回のヒアリングで経済団体が示した慎重論が、答申にどこまで反映されたのかは気になるところです。
琵琶湖森林づくり県民税の議論開始
後半は、新たに諮問された琵琶湖森林づくり県民税の審議に移りました。この税は均等割の超過課税として個人800円、法人2,200円から88,000円を上乗せ徴収するもので、年間約7億円の税収を森林整備事業に充てているとのことです。
参考:琵琶湖森林づくり県民税の使途
勢一委員の条文精査
勢一委員の質疑は法律家らしく緻密でした。条例第1条に規定された「公益的機能」「森林の健全な姿」「環境重視」といったキーワードの具体的な意味を一つずつ確認し、制定当時と現在で「環境」という言葉に内包されるものが変化していることを指摘しました。
また、制定時に6億円の事業費を想定して設定された税率が、税収増により早い段階で6億円を超えていたにもかかわらず、見直し時に税率が維持された経緯を問いました。事務局は「新たな事業が出てきたため」「将来的に基金が不足する可能性があったため」と説明しましたが、これは「税収が増えたら事業を増やす」という構図を示唆するものでもあります。
さらに勢一委員は、使途を定める要綱と琵琶湖森林づくり条例・基本計画との法的な紐付けが明確でないことを指摘し、「解釈次第であれにもこれにも使えますよということにならないよう、枠をはめると整理がしやすい」と提言しました。
佐藤副会長の書面意見――「使途を作る」本末転倒への警告
欠席の佐藤副会長は書面で鋭い指摘を寄せています。県民税7億円に加えて国の森林環境譲与税が市町分と合わせて5億5千万円ほど追加されることで財源が膨張する中、「啓蒙・教育活動、各種団体への支援など必ずしも森林保全に関係のない事業が増えるならば、『森林保全のニーズに対応する』べき県民税が、『ニーズ=使途を作る』ことになり本末転倒」と断じました。
その上で、使途を琵琶湖の保全に拡大するか、民有林の公有化という長期戦略を持つべきだと提言しています。また、県民の間での認知度が低いことにも触れ、「認知を高めた上で、その改善策を問うことが妥当」としました。
川勝委員の論点提起
川勝委員は、県民協働による森林づくりの柱が「住民自治を涵養する」意味で重要であるとしつつ、持続可能な森林管理の視点から、小規模所有者分の公有林化とその財源としての県民税活用にも可能性があるのではないかと述べています。
森林政策課の説明で見えた現場の実態
森林政策課からの説明は具体的で、いくつかの重要な事実が明らかになりました。滋賀県の地籍調査は14%程度しか進んでおらず、森林に至っては数%程度。ニホンジカの食害による植生衰退が深刻化し、台風被害も増加。市町村には林業専門の職員がほとんどいないため、県が「滋賀森づくりアカデミー」を設置して人材育成に着手したところだということです。
ハード事業(森林整備)が約7割、ソフト事業(県民協働・普及啓発)が約3割という配分は大きく変わっておらず、松田委員が書面で「森林整備があるべき水準に全然追いついていない印象がある」と述べた点と合わせて考えると、限られた財源の中での優先順位のつけ方が今後の焦点になることがわかります。
感想
第3回の議事概要を読んで感じるのは、委員が法的根拠や制度の趣旨に真正面から向き合おうとしている姿勢と、それに対する事務局の曖昧な受け答えとのコントラストです。
勢一委員の「特例が特例になっていない」という一言は、40年以上続く不均一課税の本質を突いています。特例措置は本来、特定の状況に対応するための時限的・限定的な措置であるはずですが、長く続くうちに既得権化し、もはや「なくすことが異例」になってしまっている。この構造は、今後新たな税を導入する際にも重要な教訓を含んでいます。一度作った税は容易にはなくならないということです。
琵琶湖森林づくり県民税の議論では、佐藤副会長の「使途を作る」本末転倒という指摘が最も核心を突いていました。税収が想定を超えたら新事業を追加し、国の譲与税が加わればさらに事業を膨らませる。「必要な事業があるから財源を確保する」のではなく、「財源があるから事業を作る」という逆転した論理は、行政の歳出膨張メカニズムそのものです。佐藤先生はこの発言をしながら交通税は賛成なんですか?
この構造は、後に交通税の議論でも繰り返されることになります。「公共交通を維持するために財源が必要」という建前の裏で、「新税という財源を確保してから使い道を考える」という本音が透けて見えるかどうか。第3回の森林税の議論は、その判断の試金石となる事例を提供しています。
出席委員が3名のみという点も気にかかります。6名中3名が欠席し、書面意見で参加するという形態で、十分な議論が尽くされたと言えるのか。特に法人税割の答申案は、この回をもって最終文案が会長一任となっています。佐藤副会長が書面で「地元経済界の意向が反映されていないなら慎重を期すべき」と指摘した点は、対面の場で深めるべき論点だったのではないでしょうか。

コメント