top of page

【交通税と県議会の攻防・第9回】知事が所信で「交通税」を初めて明言した日 令和4年7月①

シリーズ:交通税と県議会の攻防 滋賀県減税会


【交通税と県議会の攻防・第9回】知事が所信で「交通税」を初めて明言した日 令和4年7月

 

今回のポイント


今回は、令和4年(2022年)7月定例会議(7月21日)を取り上げます。三日月知事の3期目就任直後の所信表明と、同日に行われた補欠選挙当選議員の挨拶です。

注目すべきポイントは以下の通りです。


  • 知事が3期目の所信表明で、初めて県議会の場で「交通税」という言葉を自ら使ったこと。これまで行政用語は「地域公共交通を支えるための税制」であり、第8回で確認した通り「交通税という言葉は行政としては使っていない」と答弁されていた。

  • 所信表明の中で交通税が「社会・経済の健康を支える大動脈」の文脈に位置づけられ、「ビジョン実現のための財源をつくるための交通税」と、財源確保手段として明確に定義されたこと。

  • 補欠選挙で当選した菅沼利紀議員が、就任挨拶の中で「新税、交通税、全て賛同というわけではございません」「新しい負担を求める前に、まずはほかの歳入の部分で可能性を探るべき」と表明したこと。



知事の所信表明──交通税への言及


知事は3期目の所信表明で、「ひとの健康」「社会・経済の健康」「自然の健康」の3つの柱を示しました。交通税に関する言及は「社会・経済の健康」の中に登場します。

知事はこう述べています。

 

「これらの健康を支える大動脈は交通です。『(仮称)滋賀地域交通ビジョン』の策定や、ビジョン実現のための財源をつくるための交通税の導入検討については、丁寧に議論し、一つずつ、合意、納得をいただきながら、持続可能な滋賀の交通まちづくりを進め、つくる力とつなげる力で暮らしに安心と活力を創出してまいります。」

ここには2つの重大な変化があります。

 

第一に、「交通税」という言葉の使用です。 第8回で取り上げた通り、わずか2か月前の5月委員会で税政課長は「交通税という言葉は行政としては使っておりません」と答弁していました。それが、3期目の所信表明では知事自らが「交通税」と明言しています。選挙を経て、知事はもはや言葉を選ぶ必要がなくなったと判断したのでしょうか。

 

第二に、「ビジョン実現のための財源をつくるための交通税」という定義です。 これまで「導入可能性の検討」「丁寧に議論を深める」と慎重な表現が使われてきましたが、ここでは交通税が「財源をつくるため」の手段として明確に位置づけられています。「検討する」から「導入検討」へ──微妙な表現の変化ですが、交通税が「するかしないか」の段階から「どうするか」の段階に移ったことを示しています。


 

菅沼利紀議員の就任挨拶──新たな声


同じ日の議会で、湖南市選挙区の補欠選挙で当選した自民党・菅沼利紀議員が就任挨拶を行いました。その中で交通税に触れた部分は、短いながらも注目に値します。


「今検討されようとしている新税、交通税、全て賛同というわけではございません。滋賀の皆様方に新しい負担を求める前に、まずはほかの歳入の部分で少しでも可能性がある場所を探してみることが必要なのではないかと思っております。特に琵琶湖の可能性というものを信じて、管理料や使用料の見直しなど恩恵を受ける部分は必ずあるはずです。」

 

菅沼議員は「歳入に特化して活動してまいりたい」とも述べており、増税ではなく既存の歳入構造の見直しから始めるべきだという立場を、就任初日に表明したことになります。

これは、シリーズを通じて私たちが一貫して主張してきた「増税の前に歳出・歳入の見直しを」という順序論と通じるものです。



 

 

この日の議会が持つ意味


知事の所信表明と菅沼議員の就任挨拶が同じ日に行われたことは、象徴的です。

知事は3期目の信任を得て、交通税の導入検討を公式の施策として位置づけました。「丁寧に議論し、一つずつ、合意、納得をいただきながら」と付け加えてはいますが、交通税が知事の政策パッケージの一部として県議会で宣言されたことの意味は大きいです。

一方で、新人議員がその同じ日に「全て賛同というわけではない」と表明したことは、交通税に対する異論が議会内に存在することを示しています。菅沼議員の発言は穏やかなものですが、「新しい負担を求める前にほかの可能性を探るべき」という主張は、交通税推進の流れに対する明確な留保です。


 

感想

知事が所信表明で「交通税」と明言したことは、シリーズ全体の中で一つの画期です。これまで「地域公共交通を支えるための税制」と慎重に言い換えてきた言葉が、3期目の信任を得た直後に「交通税」に変わりました。

 

この変化は、交通税が「検討段階」から「実施に向けた準備段階」に移行したことを意味します。所信表明は知事の4年間の施策方針を示すものであり、そこに「交通税の導入検討」が明記されたということは、この任期中に何らかの具体的な結論──導入か、あるいは少なくとも制度設計の確定──が目指されているということです。

 

しかし、ここで改めて確認すべきことがあります。知事が「ビジョン実現のための財源をつくるための交通税」と述べた時点で、そのビジョンはまだ存在していません。「(仮称)滋賀地域交通ビジョン」は「策定」と書かれているのであって、完成しているわけではないのです。ビジョンがない段階で「ビジョン実現のための財源」を語る──この順序の逆転は、シリーズ第3回から繰り返し指摘してきた問題そのものです。

 

菅沼議員が就任挨拶で述べた「ほかの歳入の部分で可能性を探る」という視点は、議会に新しい風を入れるものです。琵琶湖の管理料・使用料の見直しという具体的な提案を含むこの発言は、「増税か、さもなくば公共交通の消滅か」という二択に縛られない第三の選択肢を模索する姿勢です。

 

私たちが求めているのも同じことです。まず既存の歳出を精査し、歳入構造を見直し、規制緩和による民間活力の活用を検討する。それらすべてを尽くした上で、なお不足するのであれば、そのとき初めて増税を議論すべきです。知事が「交通税」と明言したからといって、この順序が変わるわけではありません。

コメント


この投稿へのコメントは利用できなくなりました。詳細はサイト所有者にお問い合わせください。
bottom of page