【交通税と県議会の攻防・第6回】 「束ねて減らす交通政策、集めて分かち合う交通税政策」という推進派のスローガン
- 喜多G13

- 2 日前
- 読了時間: 6分
更新日:1 日前
シリーズ:交通税と県議会の攻防 滋賀県減税会

今回のポイント
今回は、令和3年(2021年)9月定例会議(9月24日)の九里学議員の質問と知事答弁、そして同年10月4日の土木交通・警察・企業常任委員会における交通政策関連の議論を取り上げます。
注目すべきポイントは以下の通りです。
九里議員が「束ねて減らす交通政策、確実に着実に集めて分かち合う交通税政策」という推進派のスローガンを掲げ、知事に「全国のリーディングモデル」創出を求めたこと。
知事が「税を含めた負担の在り方についても丁寧に議論を深めてまいりたい」と答弁し、交通税を交通ビジョンの改定(令和5年度)と連動させる方針を明確にしたこと。
常任委員会で交通税が県議会内でも「いつ出てくるか」の段階に入っていたこと。
近江鉄道の上下分離に向けた議論で、車両や設備の負担構造に対する厳しい指摘が出ており、「下の負担ばかりが重くなる」構図が浮かび上がったこと。
勘弁してくれ~・・・(血涙)
9月定例会議(9月24日)の概要
九里学議員の質問
九里議員は第4回(令和3年3月予算特別委員会)に続き、今回も交通税の推進派として質問に立っています。冒頭から「地域公共交通の消滅」への危機感を前面に出し、バス路線の利用者激減、運転手不足、公共交通空白地域の急増を訴えました。
質問は4点に及びます。コロナ後を見据えた公共交通の維持確保、利便性向上への具体的取組、厳しい状況下にある公共交通への支援、そして交通政策の進め方と決意です。
九里議員の発言で最も注目すべきは、交通税に関する明確なスローガンです。「琵琶湖を真ん中に周囲を山々に囲まれた本県ならではの交通網の形状を生かし、これからは束ねて減らす交通政策、確実に着実に集めて分かち合う交通税政策を県主導で前進さすべきだ」と述べています。
また、「ハイリスク、ハイリターンの発想でこれまでに前例のない本県ならではの滋賀交通モデルをスピード感を持って構築をしてほしい」と求め、交通税導入の県民理解、事業者の合併・連携、法改正の活用を一体的に進めるよう迫りました。
知事の答弁
知事の答弁を4つの質問に沿って整理します。
コロナ後の公共交通維持について: 路線バスの利用者がコロナ前(令和元年度)比で令和2年度は29.2%減、令和3年度も22.3%減という数値を示し、「コロナ後も元には戻らないという前提に立ち、今後の施策を推進していく必要がある」と述べました。福祉輸送や事業者送迎サービスなど「地域のあらゆる移動手段」の活用を掲げています。
利便性向上について: 選択肢を増やす取組(福祉輸送・送迎サービスと公共交通の組み合わせ)と、使い勝手をよくする取組(運行情報のウェブ検索、キャッシュレス決済)の両面を示しました。JR西日本との共同プロジェクトチームの立ち上げにも言及しています。
公共交通への支援について: 近江鉄道については令和6年度の上下分離移行を明示。路線バスについてはバスの課題検討ワーキングでの議論を紹介しました。
交通政策の進め方と決意: ここが核心部分です。知事は「令和5年度を目途に見直します滋賀交通ビジョンに盛り込む」と述べた上で、「税を含めた負担の在り方についても丁寧に議論を深めてまいりたい」と明言しました。さらに「全国のリーディングモデルとなるよう、全力で取り組んでまいりたい」と締めくくっています。
常任委員会(10月4日)の議論の概要
交通税の「具体化」
川島隆二委員が「交通税について、そろそろ何か具体の話が出てくると思うのですが」と質問しました。交通戦略課長は「次の報告事項の滋賀交通ビジョンの総括でお話をさせていただきます」と回答し、交通税がビジョンの議論と連動して具体化されつつあることを交通戦略課が示唆しました。
近江鉄道の上下分離──負担構造への厳しい指摘
木沢成人委員が、近江鉄道の上下分離について技術的かつ本質的な問題提起を行いました。
車両の調達問題については、西武鉄道からの中古車両供給に依存する現状に対し、「西武鉄道が新たに中古で出せるような車両があるのか不安がある」と指摘。車両が古くて重いため線路への負担が大きく、「上下分離したときに、車両もセットで持つのであれば、大胆にコストが下がる方向でしっかり考えないといけない」と述べました。
さらに「上の近江鉄道は切ってしまえばこれは楽です。下ばかり負担が重たくなる」と、上下分離後の負担構造の歪みを明確に指摘しています。
木沢委員は「近江鉄道のペースで全部そういう話になっていくとおかしい話になる」とも述べ、近江鉄道側の提案に対して県や市町が十分に対峙できていない状況に警鐘を鳴らしました。
通学定期の問題──教育委員会の不在
木沢委員は、重点事業である通学定期券の購入促進について、法定協議会に参加している県教育委員会が「ほぼ発言がない」ことを問題視しました。通学利用は全体の3分の1を占める重要な要素であるにもかかわらず、事業主体が「関係市町」のままで、県教育委員会の関与が見えない状態が続いています。
CO2削減と交通ビジョン
黄野瀬委員が、滋賀交通ビジョンにCO2削減を大きな柱として据えるべきだと提案しました。運輸分野のCO2排出が全体の18%を占めることを指摘し、具体的な目標値の設定を求めています。交通戦略課長は「しっかりと意識して取り組んでまいりたい」と答弁しましたが、具体的な数値目標は示されませんでした。
滋賀県減税会のコメント
九里議員が掲げた「束ねて減らす交通政策、集めて分かち合う交通税政策」というスローガンは、交通税推進の論理を端的に表現しています。しかし、ここには重大な前提の飛躍があります。「束ねて減らす」とは、路線や事業者を統合して効率化するということです。これ自体は合理的な発想かもしれません。しかし、「集めて分かち合う」は、その効率化の費用を県民全体に負担させるということです。束ねることで効率化できるなら、なぜ新たな税が必要なのか。束ねても赤字が残るなら、それは束ね方が不十分なのか、そもそもその路線に需要がないのか。その検証なしに「集めて分かち合う」に飛ぶのは論理の飛躍です。
ですが、推進議員以外からは鋭い指摘は数年前から出続けていたことも解りますね。
常任委員会での木沢委員の指摘は本質を突いています。上下分離方式で「上は楽になるが、下ばかり負担が重くなる」という構造は、交通税の問題と直結しています。「下」の負担は公費、すなわち税金です。近江鉄道の古い重い車両が線路を傷め、その修繕を税金で賄い、車両の調達も先行きが不透明。この状況で交通税を導入すれば、経営の非効率を県民が負担し続ける構図が固定化されます。
木沢委員が「近江鉄道のペースで話が進むとおかしくなる」と警告したのは、まさにこの点です。事業者側の都合で負担構造が決まり、その負担を県民に求めるために交通税がつくられる──これは受益者負担の原則から大きく逸脱しています。
知事は「全国のリーディングモデル」を繰り返しますが、交通税が全国初の事例となることのリスクについては一切語りません。滋賀県がモデルケースになれば、他県も追随し、全国的な交通税導入と国民負担の増大につながる可能性があります。リーディングモデルを自任するなら、その責任の重さも自覚すべきです。九里議員は議員辞めてください。



コメント