【交通税と県議会の攻防・第1回】「誰もが必要な時に必要な場所へ移動できる環境」──平成29年、交通税構想の産声
- 喜多G13

- 2 日前
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シリーズ開始にあたって
滋賀県が独自の「交通税」を導入しようとしています。公共交通の維持・充実を名目に、県民から新たに徴収しようとするこの税をめぐって、県議会では長年にわたって議論が積み重ねられてきました。滋賀県減税会では、この攻防の歴史を議会録から丹念に読み解き、「交通税と県議会の攻防」シリーズとしてお届けします。平成29年から令和8年現在に至るまで、議論はどのように展開してきたのか。ともに見届けていきましょう。
この回の読みどころ
令和8年の委員会審議では、多くの委員が交通税への強い反対を表明しました。しかし、この税の議論はいつ、どのように始まったのでしょうか。平成29年12月7日の本会議に、その「産声」を聞くことができます。成田政隆・元議員が交通税の必要性を提言し、三日月大造知事が「議論・研究してまいりたい」と答弁したこの日こそ、滋賀県議会における交通税論議の原点のひとつです。
会議の背景
平成29年11月定例会議(第17号)は令和8年から7年以上さかのぼる時点の審議です。この当時、滋賀県では「交通税」という言葉はまだ政策として俎上に上がったばかりでした。知事が「公共交通基本条例の制定も視野に入れ、さらに議論と検討を深めてまいりたい」と述べていたことからも、制度の輪郭はまだ極めて漠然としていました。
後に交通税反対論の主要な根拠となる「22億円・53億円」という試算も、パブコメ前に発表された滋賀交通計画のスローガン「誰もが行きたい時に行きたい場所へ」も、まだ存在しません。この時点では、交通税は「夢のある提言」として語られていました。
成田政隆・元議員の交通税や交通権についての主張
成田・元議員(以下、成田議員)は、公共交通政策について幅広い視点から質問を展開しました。特に注目すべきは、フランスの「交通税」を具体的に紹介しながら、滋賀県独自の財源確保を求めた点です。
成田議員はまず、運動不足と医療費の相関データを示しながら、「公共交通を軸とした歩いて暮らせるまちづくり」への転換を求めました。また、JR瀬田駅・南草津駅周辺へのLRT(次世代型路面電車)構想や、BRT(バス高速輸送システム)の導入を提言し、「攻めの公共交通整備」を訴えました。
注目すべきはこちらの発言です。
これまでも質問してまいりましたが、誰もが必要なときに必要な場所へ移動できる環境を整え、交通弱者を意識した県民に交通を保障する権利──交通権を滋賀県に位置づけるとともに、行政、交通事業者、NPO、地域団体も含めた民間との役割を新たに構築し、公共交通を守っていく必要があると考えます。
ここが交通ビジョンの原点になっていますね。
財源論についてはフランスの事例を持ち出し、こう述べています。フランスのナント市では、交通税という独自の目的税を活用して年間約191億円の税収を公共交通の運行費に充て、一部を基金化して将来の大規模設備投資に備えているとのことです。これを踏まえ、成田議員は「交通税や基金の造成など、公共交通にかかわる財源の確保策が必要ではないか」と知事に問いかけました。
さらに、誰もが移動できる権利(交通権)を条例で位置づけ、公共交通を守るための「滋賀県交通基本条例」の制定を求めました。
三日月知事の答弁と問題点
成田議員の質問に対し、三日月知事はフランスのナント市を自ら視察したことを明らかにした上で、次のように答弁しています。
「フランスと日本では法制度や地方行政組織が異なりますが、本県においても、フランスと同様に、行政が主体となってサービスレベルの高い公共交通体系を整備し運営するのであれば、一定の財政負担を要するものと認識しています。今後、必要とされる公共交通サービスや、公共交通の確保に係る費用負担や財源のあり方などについて、議論、研究してまいりたい」
この答弁には、後の交通税論議の種がすでに埋め込まれていることがわかります。
注目すべきは「議論・研究」という言葉の曖昧さです。この時点では「導入する」とは一言も言っていません。しかし、知事がフランスの交通税を「参考になるモデル」として紹介した事実は、その後の政策方向を決定づけるものでした。県が「研究する」と言い始めたとき、その先に何が待っているかは、その後の審議を見れば明らかです。
また、交通基本条例の検討状況について知事は「公共交通の条例制定も視野に入れ、さらに議論と検討を深めてまいりたい」と述べましたが、「視野に入れ」という表現は、後に実際の動きとなってきます。
滋賀県減税会のコメント
平成29年12月のこの本会議審議を振り返ると、当時、交通税の議論に異を唱える委員はほとんど見当たりません。成田議員による提言は前向きに受け止められ、知事は「議論・研究」を約束しました。
しかし滋賀県減税会は、この出発点そのものに疑問を呈します。
フランスの交通税は確かに一つの政策モデルです。しかしフランスの交通税は、主に事業主(雇用者)が負担する仕組みであり、日本の文脈にそのまま移植できるものではありません。また「移動の権利(交通権)を保障するために税が必要だ」という論理は一つの考え方のようには見えますし、「議論・研究」という言葉は中立的に聞こえます。しかしその後の経緯を見ると、研究の出発点がすでに「交通税導入を前提とした研究」であったことが浮かび上がってきます。
次回への展望・注目点
平成29年の段階では「議論・研究する」という段階でした。では、この議論はその後どのように進んでいったのでしょうか。次回以降では、交通税論議が具体化していく過程を追っていきます。
特に注目すべき点は次の2点です。ひとつは、反対意見がいつ、どのような形で初めて県議会に登場するか。もうひとつは、三日月知事が「研究」から「導入検討」へと踏み込む転換点がどこにあるかです。
令和8年の委員会で噴出した「税ありき」「説明不足」「市町との合意なし」といった批判は、この平成29年から積み上がってきた問題の帰結です。シリーズを通じて、その道筋を丹念に追ってまいります。
お願い 交通税反対署名、まだの方は是非お願いします!
こちらからどうぞ!→https://c.org/29dKHK7Y4d



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