【交通税と県議会の攻防・第20回】確証バイアスとライドシェアの選択肢
- 喜多G13

- 4月22日
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今回のポイント

令和5年9月定例会議の一般質問で、交通税の議論に二つの重要な一石が投じられました。
柴田栄一議員(滋賀維新の会)は、交通ビジョン策定のためのアンケートの構造そのものを正面から批判しました。「公共交通は必要ですか」から始まり、「なぜ必要か」「維持のためにできる行動は」「負担方法の選択」「許容額の選択」と続く設問の流れを具体的に示し、「明らかに税負担が望ましいという回答になるよう誘導している」「確証バイアスと捉えられても仕方がない」と断じました。さらに「税負担したくない」という選択肢がないことで、「回答者全員が税負担を容認しているように見えるグラフになっている」と指摘。
「これは真の滋賀県民の声と言えるのか」という問いかけは、県の合意形成プロセスの根幹を揺るがすものです。

一方、谷口典隆議員(自民党)は、ライドシェアの導入について知事に迫りました。高齢者の免許返納問題や運転手不足の現実を踏まえ、「ライドシェアこそが交通弱者の移動支援の切り札」と主張。そして「交通税があればどういう社会になるかだけでなく、ライドシェアがあればどういう社会になるかも想像してほしい」と、増税と規制緩和という二つの選択肢を対等に並べることを求めました。
交通税議論のまとめ
9月定例会議・本会議(9月29日)
柴田栄一議員(滋賀維新の会)は、アンケートの設問構造を具体的に分析し、公共交通が必要→負担方法の選択→許容額の選択という流れが「税負担容認」へ一方的に誘導する構造になっていると批判しました。反対意見の選択肢がないため「中立性および客観性に欠ける」と述べ、「確証バイアス」という学術的な概念を用いて問題の本質を指摘しました。
その上で、交通ビジョンの議論が「増税ありき、県民負担ありきの表現になっている」と述べ、「お金をかけずにできる案や、規制緩和の実施、予算編成内の調整など、まずは見直しを行うことが最優先」だと主張しました。
再質問では「反対意見もあり、賛成意見もあり、全ての意見を集約して、正しく県民に見せることが大切」と、情報公開の公正性を改めて求めました。
谷口典隆議員(自民党)は、ライドシェアの導入について包括的な質問を行いました。県内のタクシー運転手が令和4年度末に元年度末比で約2割減少している現状、65歳以上の免許自主返納者が平成23年の802人から令和元年の6,345人へ8倍近く増加している実態を示し、「免許を返納したくても返納できない高齢者が多くいる」と訴えました。
彦根市グラウンドゴルフ協会のアンケートで6割以上が「移動手段の課題が解消されればもっと行事に参加したい」と答えている例も紹介し、「気軽に目的地まで短距離でも利用しやすいライドシェアは、鉄道交通の利便のよい滋賀の地にこそ必要な新交通システム」と位置づけました。
核心は再質問で放たれた一言です。知事が代表質問で「交通税のようなものがあればどういう社会になるのか」と答弁したことを引き、「交通税だけではなくてライドシェアがあればどういう社会になるのかということも想像性を膨らましていただきたい」と述べ、ライドシェアを交通ビジョンの中に位置づけるだけでなく、全国知事会でも提言するよう求めました。
知事や県側その他の答弁のまとめ
9月定例会議(9月29日)
知事は、柴田議員のアンケート批判に対し、「新たな負担を求めることについては慎重であるべきだ」「規制緩和や既存の予算を使った対策も重要」と述べました。一方で、「例えば交通税というようなものがあればどのような自治が実現するのか、社会がつくれるのかも示しつつ議論を積み重ねたい」と、交通税を選択肢から外す考えはないことも明示しました。
再質問に対しては、「かなんわ(嫌だ)という方もたくさんいらっしゃると思う」と認めつつ、「オプションバリューの視点を顕在化させて共有し、これからの在り方を探りたい」と述べました。
谷口議員のライドシェアについては、県内タクシー運転手が約2割減少している現状を認めた上で、「ライドシェアが乗りたい人と乗せてあげたい人を結びつける、一つの可能性のある手段だということについては認識を共有する」と答弁。関西広域連合での研究にも言及し、「交通手段がない地域からそういったものを導入する可能性を検討することは大いにあり得る」と述べました。ただし、全国知事会での具体的な提言については明確な約束を避け、「47人の知事の皆さんとも課題を共有し、必要な提言や議論は積極的に行いたい」という表現にとどめました。
感想
今回の質疑は、交通税の問題を「増税か否か」という二者択一ではなく、「増税か規制緩和か」という選択肢の問題として提示した点で画期的でした。
柴田議員が明らかにしたアンケートの誘導構造は深刻です。「必要か」→「負担方法は」→「許容額は」という流れには、「そもそも新たな負担は不要」という選択肢が存在しません。これでは、結果が税負担容認に偏るのは当然です。確証バイアスという指摘は的確であり、このアンケート結果を「県民の声」として政策の根拠にすることは到底認められません。
谷口議員の「交通税があればどういう社会になるかだけでなく、ライドシェアがあればどういう社会になるかも想像してほしい」という問いかけは、まさに私たち減税会が訴えてきた「規制緩和による民間活力の活用」そのものです。知事は「可能性のある手段」と認めながらも、ビジョンの中心には据えようとしません。増税には積極的に「議論を積み重ねる」と言いながら、規制緩和には「不断に研究する」と控えめな表現にとどまる。この温度差こそが、交通税ありきの姿勢を如実に表しています。
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