県が33年間、事務局を務めている鉄道構想をご存じですか ~現代版・びわこ京阪奈線構想(仮称)~
- 喜多G13

- 3 日前
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交通税の議論では、「県が主導すれば地域交通はよくなる」という前提が、あまり疑われないまま置かれています。
その前提を検証できる材料が、滋賀県のホームページにあります。びわこ京阪奈線(仮称)鉄道構想です。

この構想について、令和8年7月29日の本会議にて小河 文人議員(自由民主党滋賀県議会議員団)が質問されていたので少し解説したいと思います。

びわこ京阪奈線(仮称)とはどんな構想なのか
近江鉄道の米原駅を起点に、近江鉄道本線と信楽高原鐵道を経由し、京都府南部を通ってJR片町線(学研都市線)につなぐ、路線延長およそ90キロメートルの新線建設構想です。
県のページは、この構想の「必要性」として三つを挙げています。
一つめが、鉄道沿線の活性化と地域振興です。近江鉄道本線沿線はJR琵琶湖線沿線に比べて開発状況や地域産業の振興等で大きく遅れており、その活性化のためには京都・大阪方面と直接鉄道で結ぶ本構想の実現がぜひとも必要である、と書かれています。
二つめが大阪湾ベイエリア地域との交流軸の強化、
三つめが震災時等の重要なバイパス機能です。
続く「整備効果」の項には、時間距離の短縮や地域産業の活性化と並んで、「最適リゾート地を提供します」という項目も置かれています。
会長は知事、事務局は県
この構想を進めている「びわこ京阪奈線(仮称)鉄道建設期成同盟会」の構成は、県議会に提出された資料に明記されています。
令和5年1月時点で、会長は滋賀県知事です。構成員は沿線市町長、沿線地域選出の県議会議員、沿線市町議会議長。事務局は滋賀県土木交通部の県東部地域公共交通支援室が務めていました。
沿革を見ると、平成元年7月に「湖東・大阪線(仮称)鉄道建設期成同盟会」として設立された当初、事務局は八日市市にありました。県が正式に加盟したのが平成2年8月、事務局が八日市市から県へ移管されたのが平成5年4月です。
市が始めた取り組みを、四年後に県が引き取った形です。それから33年が経ちました。
つまりこれは、37年にも及ぶ構想です。
どこまで進んだのか
県のページに掲載されている取り組み経過を、そのまま並べます。
平成元年度にルートと概算事業費の基礎調査。平成3年度に需要予測基礎調査。平成5年度にプロジェクト可能性基礎調査。平成5年度から6年度にかけて鉄道採算性可能性基礎調査。平成7年度から11年度にかけて事業化可能性調査。
平成7年6月には「滋賀県地域交通計画」に位置づけられ、平成8年6月には大阪湾臨海地域開発整備法に基づく滋賀県関連整備地域整備計画にも位置づけられました。
そして平成16年10月、近畿地方交通審議会の答申で「構想路線」として認知されました。
取り組み経過の記載は、ここで終わっています。ページの最終更新日は平成27年9月17日です。
新線の建設には、着手されていません。
令和5年時点で、何をしていたのか
同盟会が解散したわけではありません。県議会の特別委員会に令和5年1月24日付で提出された資料には、当時の取り組みが八項目にわたって列挙されています。
沿線市町等が実施する鉄道利用促進事業への支援、近江鉄道の車内で絵画を展示するギャラリートレインの運行、列車ヘッドマークの図柄の募集と表彰、信楽高原鐵道沿線の景観形成事業への支援、びわこ京阪奈フリー切符の販売およびアプリを活用した利用促進、ひなまつり電車と映画ロケ地電車の運行、沿線盛り上げ活動の表彰、京都南部横断鉄道新線研究会との交流事業。
そのうえで、資料にはこう書かれています。
「まずは地域と鉄道事業者が一体となって既存鉄道の利用促進に取り組む。」
活動は現在も続いています。令和7年には近江鉄道と信楽高原鐵道でスタンプラリーが実施され、令和8年4月には近江鉄道の車両にびわこ京阪奈線のヘッドマークが掲出されたと報じられています。
これらの取り組み自体を悪いと言うつもりはありません。地域の鉄道を盛り上げる活動には意味があります。
ただ、90キロメートルの新線を建設するために設けられた組織の活動が、30年を経てこうした内容になっていること。そして、その組織の事務局が県に置かれ続けていること。ここは、私たちが引っかかっている点です。
この構想と近江鉄道
この構想の「必要性」の筆頭に挙げられているのが、近江鉄道本線沿線地域の活性化であったことを、もう一度確認しておきます。
その近江鉄道は、令和2年3月の近江鉄道沿線地域公共交通再生協議会において全線存続の方向が決まり、令和6年度から上下分離方式に移行しました。施設は県と沿線市町が保有しています。そのことは、「近江鉄道がなければ東近江市は死ぬ」とよく言われる東近江市の商店街の人すら、「上下分離で維持したのはおかしい」とおっしゃっています。

結局新線は建設されず、活性化の対象とされた路線は、公費で支える仕組みに移りました。
近江鉄道の維持については、2020年3月の協議会で存続が決定しましたが、繰り返し何度も述べてきたように、近江鉄道の公費による維持は「維持した場合の費用は年6.71億円程度。維持しなかった場合の費用年19億~の方が大きい」とする資料を示されたたった1回の会議にて決定しました。
ですが、鉄道敷をそのままバス専用路線にし、バスへの転換のほうが全体的な交通にかかる費用としては安くなります。そのような検討などこの会議ではされた様子はありませんでした。
交通税についても・・・
3月に策定された滋賀地域交通計画の第6章は、財源確保の方法を五つ挙げています。
そのうち四つめに「数十億円単位の費用を1~3の取組のみで賄うことが困難となることも想定されます」とあります。
見直しはこれからと書きながら、同じ章で賄えないと想定している。これを増税ありきと呼ばずに何と呼ぶのでしょうか。
そのようにあらゆる可能性を検討していない県のやり方が目に見えているのに、「県が考えることが最善で、この交通計画は無駄もなく、成功する」として考えるのは、無理があると思えます。
私たちが確認したいこと
県が主導する長期の交通事業とは、実際にどのように進むのか。
構想を掲げ、調査を重ね、計画に位置づけ、審議会の答申を得て、そして今はイベント電車を走らせている。びわこ京阪奈線の37年は、その問いに対する一つの記録です。
誰かが手を抜いたわけではないと思います。ただ、県主導の長期構想という枠組みは、こうした帰結を生みやすいのではないか。これが私たちの見方です。
その枠組みのまま、新しい税を財源として、県だけで年58億円に達しうる事業が進められようとしています。
県にお尋ねしたいこと
一つ、びわこ京阪奈線(仮称)鉄道建設期成同盟会の年間予算はいくらで、うち県の負担額はいくらでしょうか。
二つ、平成元年以降、この構想に関して県が支出した調査費等の累計はいくらでしょうか。
三つ、90キロメートルの新線建設は、現在も目標として維持されているのでしょうか。維持されているのであれば、事業費と工期の見通しをお示しください。維持されていないのであれば、いつ、どの会議体で、その判断がなされたのでしょうか。
四つ、令和8年3月31日に策定された滋賀地域交通計画において、この構想はどの程度の実現可能性をもって位置づけられているのでしょうか。
ということです。
おわりに
交通税に反対か賛成かという話の前に、県民が知っておくべきことがあります。
県は、地域交通の大きな構想を掲げて長期間取り組んできた実績を、すでに持っています。その実績がどういうものであったかは、県のホームページと県議会の資料を読めば分かります。
ぜひ、ご自身の目でご確認ください。
出典
滋賀県「びわこ京阪奈線(仮称)鉄道構想」(最終更新 平成27年9月17日) https://www.pref.shiga.lg.jp/ippan/kendoseibi/koutsu/20098.html
滋賀県議会 公共交通・国スポ・障スポ大会対策特別委員会資料1「びわこ京阪奈線(仮称)鉄道建設構想について」令和5年1月24日、土木交通部県東部地域公共交通支援室 https://www.shigaken-gikai.jp/voices/GikaiDoc/attach/Nittei/Nt18011_1.pdf
滋賀県「滋賀地域交通計画」第6章 施策実施のための財源のあり方(令和8年3月31日策定) https://www.pref.shiga.lg.jp/file/attachment/5602924.pdf
滋賀県「滋賀地域交通計画の策定について」 https://www.pref.shiga.lg.jp/kensei/koho/e-shinbun/oshirase/349641.html



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