第19回滋賀県税制審議会(令和6年3月28日開催)の交通税関連の議事概要
- 喜多G13

- 3 日前
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第19回滋賀県税制審議会 議事概要まとめ
2月15日の交通フォーラム後の審議会ですね。
交通ビジョンに賛成派しか登壇しない、情報偏りまくりの第2回交通フォーラムについてはこちらのブログをご覧ください。

開催概要 令和6年3月28日、WEB開催。諸富会長ほか委員5名、三日月知事が出席。議題は産業廃棄物税の答申案と、滋賀地域交通ビジョン等について。
知事の冒頭発言
知事は「ビジョンを実現するための施策づくり、計画の議論を行っていく」「財源の選択肢の一つとして交通税というものがあれば、どのような暮らしになるのかを逃げずに丁寧に議論していく」と表明。3期目の公約に「交通税の検討推進」を掲げていることにも触れ、任期中に「こういった交通のあり方が、こういった税の負担分担の仕組みの中で作れるのではないかということを示したい」と述べています。
委員の主な発言(交通税関連)
川勝委員 は、ビジョン策定のプロセス(県民との対話、フォーラム等)を高く評価。特に「財源とセットで議論したからこそリアリティのあるビジョンになった」と述べました。また「公共交通が充実すれば車を減らせる。負担が増す面だけでなく、減る負担もあることを示すべき」という趣旨の発言をしています。
佐藤委員 は、複数の重要な指摘をしました。「税は自分が払うものという意識をどこまで持っているのか分からない」「県民としてなぜ自分たちが負担しなければいけないのかという議論になるので、県として公共交通を支える意味を定量的に示すべき」と述べ、「なぜ県がやるのか」の説明が不足していると繰り返し問いかけました。ライドシェアについても「交通空白地域をライドシェアで埋められるか並行して議論すべき」と指摘。さらに「県が主導して市町の地域公共交通計画に対し、必要に応じて見直しを迫っていくべき」との踏み込んだ意見も出しました。
齊藤委員 は「なぜ県なのかは重要」「税を取った後にどう配分するか考えると、地域間格差が出る際にきちんと説明できることが必要」と述べ、超過課税を念頭に置きつつも「観光客の負担として宿泊税もセットで考えることになるかもしれない」と言及しました。
松田委員 は、圏域ごとのワークショップの運営方法や圏域間の調整の必要性を指摘。「地域間で利用の差があまりにも大きいので、交通税の話はまとまるのかと心配していた」というデータサイエンス学部の先生の声も紹介しました。
諸富会長 は「施策案と財源がセットで議論されることは議論を真剣なものにする」と評価しつつ、「税ありき、負担先行という批判に対しては、裏にやるべき交通政策があることを示さなければならない」と述べました。「望めば望むほど負担も重くなるので、有権者・納税者としてどこまで負担してどこまで施策の充実を求めるかという感覚が出てくるはず」という発言もしています。
県側(事務局)の主な説明
税政課は「何をするかまだ示せていない段階なので、負担先行という指摘は仕方ない」と率直に認め、「どのような形で負担を示すかが一番の課題」としました。
交通戦略課は、県民対話で「負担してもよい」と答えた人が約6割いる一方、負担方法については「税で広く県民が負担すべき」と「公共交通を使う人が負担すべき」がほぼ同数だったと報告。ライドシェアについては「最適という部分については積極的に取り入れたい」と述べました。
感想
「税制審議会で議論」という形式が、増税を正当化する装置?
第19回税制審議会の議事概要を読んで最も強く感じたのは、この審議会が「交通税を導入すべきかどうか」を議論する場ではなく、「交通税をどのように導入するか」を議論する場になっているということです。
委員の発言を見ると、川勝委員は「財源とセットで議論したからこそリアリティのあるビジョンになった」と絶賛し、諸富会長は「施策と税を一緒に議論することは素晴らしい」と評価し、「滋賀県で強烈な反対といった雰囲気になっていない」と述べています。齊藤委員に至っては「超過課税を念頭に」「宿泊税もセットで」と、まだ導入も決まっていない段階で課税方式の拡大まで視野に入れています。
5名の委員全員が交通税に前向きな姿勢を示し、「そもそも新税が必要なのか」「既存の歳出見直しで対応できないのか」「規制緩和で民間が担えないのか」という根本的な問いを発する委員は一人もいません。これは審議ではなく、結論が決まった上での追認です。
「なぜ県がやるのか」すら答えられていない
唯一、批判的な視点に近い問いかけをしたのは佐藤委員です。「なぜ県がやるのか」「定量的に示さないと、県民としてなぜ自分たちが負担しなければいけないのかという議論になる」と繰り返し指摘しました。
しかし、この当然の問いに対して、県側は明確に答えられていません。交通戦略課は「市域を越えた通勤がある」「観光は広域で考える必要がある」と一般論を述べただけで、具体的なデータは示されませんでした。「なぜ県なのか」という最も基本的な問いにすら答えられない状態で、税の議論を進めていること自体が問題です。
「6割が負担してもよい」の実態
交通戦略課は「どの地域でも6割くらいは負担してもよいとの回答」と報告しましたが、同時に「負担の仕方を聞くと、税で広く県民が負担すべきと、公共交通を使う人が負担すべきがほぼ同数」だったとも述べています。
つまり、「負担してもよい」と答えた6割の中でも、「自分も含めた全県民で税負担する」ことに賛成している人は半分程度ということです。実質的に県民全体への課税を支持しているのは3割程度に過ぎない可能性があります。しかも、この数字自体が、前回までのブログで繰り返し指摘してきた誘導的なアンケートの結果です。
「車を減らせるから負担が減る」という詭弁
川勝委員は「公共交通が充実すれば車を1台減らせる可能性がある。負担が増す面だけでなく、減る負担もある」と述べました。諸富会長も同様の趣旨の発言をしています。
これは一見もっともらしい議論ですが、現実には成り立ちません。滋賀県のような地方では、車がなければ生活が成り立たない地域が大半です。公共交通のサービス水準がどれだけ上がっても、バスが20分に1本来る程度では車を手放せません。ましてや、県側自身がビジョンの目標を「意気込み」と認め、「劇的に利用者が増えることは想定できない」と答弁しているのです。実現する見込みのない利便性向上を前提に「車が減らせるから負担は相殺される」と言うのは、県民に対して不誠実です。
審議会の構造的な問題
そもそも、この審議会の委員構成に問題があります。5名の委員は全員が学識経験者であり、税制や財政の専門家です。納税者の代表、中小企業の経営者、年金生活の高齢者、子育て世代の当事者は一人も入っていません。
「参加型税制」を標榜しながら、税の設計を議論する最も重要な場に県民の代表がいない。これは構造的な矛盾です。専門家だけで議論すれば、「制度としてどう設計するか」という技術論に終始し、「そもそも増税すべきか」という政治的判断は後景に退きます。今回の審議会がまさにそうなっています。
松田委員が紹介した「地域間で利用の差が大きすぎて、交通税はまとまるのか」というデータサイエンスの専門家の懸念こそ、この審議会の外から聞こえてくる率直な声ではないでしょうか。
知事の「5つの視座」に欠けているもの
知事は協議会で「5つの視座と2つの姿勢」を示したと語りました。しかし、その5つの視座には「既存事業の見直し」「歳出の優先順位の再検討」「民間活力の最大限の活用」は含まれていません。あるのは「財源として交通税をセットで議論しよう」という視座だけです。
増税以外の選択肢を真剣に検討した形跡がないまま、「逃げずに議論する」と言われても、それは「増税から逃げない」という意味にしか聞こえません。本当に逃げずに議論するなら、「増税しない」という選択肢も同等に扱うべきです。

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