第13回滋賀県税制審議会(令和4年1月7日)概要 「交通税、住民投票は論外」
- 喜多G13

- 19 時間前
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出席委員6名全員が揃った回で、CO2ネットゼロ税制の答申提出と、交通税の本格的な制度設計議論が行われました。

冒頭:CO2ネットゼロ税制の答申
諸富会長から知事に答申が提出されました。知事は「特に重要なのは社会的公平性への配慮」と述べ、受け取りました。
交通税の議論:6つの論点で展開
事務局が6つの論点を提示し、順に議論が行われました。
論点1:なぜ交通に新たな税負担を求められるのか
佐藤委員が2つの柱を示しました。「長期的なビジョンが必要」と「税の目的は安定財源の確保」です。公共交通はあくまで手段であり、背後には「地域の再編成」という目的があるべきだと指摘。コンパクトシティ、防災移住、公共施設総合管理計画を含めた「連立方程式」を解く必要があると述べました。
井手委員が注目すべき発言をしています。「交通政策基本法で『交通権』が方針として示されたが、その権利を保障するための財源手当が議論されていなかった。人権として認められた新しい権利に対して財源が追いついていないということは、税負担を求める決定的に重要な理由になる」──交通税を「権利保障」の問題として位置づけた発言です。
川勝委員は「この税は単に公共交通だけを支えるのではなく、環境、教育、健康などあらゆる領域を支えるもの」と、交通税の正当化根拠をさらに拡張しました。
論点2:合意形成のあり方
佐藤委員が「交通ビジョンと税制はキャッチボールのように一体で議論すべき」と提言。ビジョンだけ先に作ると「後出しじゃんけん」になり、税だけ先に決めるとビジョンが縛られる、と。県民アンケートや対話の場でも「これくらいのお金がかかりますよ」「あなたの税金はこれくらい上がりますよ」と一緒に提示すべきだと述べました。
井手委員が「参加型税制」という概念を紹介しました。税の議論を通じて行政と市民が関わり合うプロセス自体に価値がある、という考え方です。「住民投票などというやり方は論外」とも述べており、住民が「賛否を問われる」のではなく「対話に参加する」形を志向しています。
諸富会長は神奈川県の水源環境税導入経験を踏まえ、「負担の議論とセットにすることで議論が真剣になる」「早い時期に知事が登壇する県民集会のようなものをやるのが良い」と提案しました。
論点3:県と市町のリーダーシップ
佐藤委員は「役割分担ではなく一体的に行うことが必要」「協議会のような仕組みで、都市計画・交通ビジョン・財源論の3つを同時に進めるべき」と述べました。
井手委員が「リーダーシップ」の語源に遡り、「敷居を超えていくのがリーダーの本質。上から下ろすのは矛盾」「今求められるのはシステム・リーダー。変化が自立的に動く条件を整えるのが県の役割」と指摘。上位計画で市町を従わせる発想への根本的な疑問を呈しました。
知事は「リーダーシップはフォロワーシップだ」と述べつつも、「県という行政体としては上から目線になりがち」と自覚を示しました。
論点4:県が税を徴収し市町に交付する仕組み
佐藤委員は「間接補助にすると使途が不明確になる。事業単位で補助金を出す形が望ましい」と主張。
井手委員は「交通権の保障という観点に立てば、各市町の財政力に応じて権利が保障されたりされなかったりということがあってはならない。県レベルで行う必要がある」と述べました。
勢一委員は配分基準について、「人口割だけだと公共交通の支援が必要な地域ほど配分が少なくなる。複数基準の組み合わせが現実的」と提案。諸富会長は「鉄道路線やバス路線の営業距離に応じた配分」を一案として示しました。
論点5:税収の使途
佐藤委員が4点を指摘。「まず受益と負担が見合っているか確認」「Uberやライドシェア、自動運転など新分野も充実の対象に含めるべき」「税収が大きすぎると使途が拡散する(森林環境税の教訓)」「公共交通の受益は幅広く理解すべき」。
井手委員は「維持か充実かという問い自体がおかしい。何をニーズと考えるかが出発点であるべき」と問い方そのものに異議を唱えました。
勢一委員は「既存の公共交通をそのまま維持することはほぼ不可能。形を変えていくことからスタートすべき」と述べました。
論点6:超過課税の税目選択
佐藤委員が各税目を詳細に評価。固定資産税が「一番良い」と明言しました。理由は「地域公共交通がもたらす地域全体の受益と関連があるから」。ただし「ハードルが高い」とも認め、次善として県民税の所得割を挙げています。均等割は琵琶湖森林づくり県民税で既に上乗せ済み、車体課税は生活の足として負担感が大きい、法人二税は大企業・県外企業への課税色が強い、と整理しました。
また「どの税目であっても、超過課税されていることが住民に認知されることが必要。森林環境税が課税されていることを知らない住民が意外と多い」と指摘しました。
知事の締めくくり発言
知事は以下の認識を示しました。
「どういう社会、地域を作りたいのかというところから、『そのためにはこういう交通がいいよね』という順番で考えていく」
「理想論だけでは事が片付かないので、安定財源をどう求めるかも重要」
「作って終わりではなく、運用・配分・効果・検証もみんなで関わるプロセスが大事」
維持か充実かという問い自体について「井手委員をはじめ委員から『問いかけが違う』と言われるかもしれないと思いつつ臨んだら、案の定御指摘をいただいた」と率直に認めた
問題点
1. 「交通権」が増税の決定的根拠に格上げされた
井手委員が「人権として認められた権利に財源が追いついていない」と述べたことで、交通税は「便宜的な財源確保策」から「権利保障のための税」へと論理的に格上げされました。権利の保障は拒否しにくい──この論理が確立されると、「増税に反対すること=権利保障に反対すること」という構図が作られかねません。
2. 「参加型税制」の名の下に住民投票が排除された
井手委員が「住民投票は論外」と述べた点は重大です。「対話のプロセスに価値がある」という理念は美しいですが、最終的に住民が「賛否を表明する」機会を封じてしまえば、「参加したが決定権はなかった」ことになります。
3. 固定資産税が「一番良い」という方向性
佐藤委員が固定資産税を最有力候補として明言しました。固定資産税は市町村税であり、県の超過課税には制度的ハードルがあります。次善の所得割は「県民全体への負担」に直結するため、いずれにしても県民の実質的な負担増は避けられない方向性です。
4. 歳出削減・規制緩和の視点が引き続き皆無
佐藤委員がUberやライドシェアに言及したのは注目に値しますが、それも「充実の対象に含める」という文脈であり、「規制緩和によって民間活力で解決する」という方向性ではありません。29ページの議事概要の中に「歳出削減」「行政コスト見直し」の言葉は一度も出てきません。
5. 「連立方程式」の難しさが示された
佐藤委員が指摘した通り、都市計画×公共交通×税制×県と市町の関係、という連立方程式は極めて複雑です。しかし、この複雑さそのものが、県民にとっては「中身がよく分からないまま増税だけが決まる」リスクを高めています。
県議会の攻防を書きたかったのに、あまりに税制審議会の内容もひどいのでこちらもほぼシリーズ化状態です・・・

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