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【交通税と県議会の攻防・第3回】「かきくけこ」から交通税へ、たった1回で収れんした税制審議会

更新日:1 日前

共産党松本議員

 

今回のポイント

今回取り上げるのは、令和2年(2020年)11月定例会議(12月10日)における、日本共産党・松本利寛議員と三日月知事の一問一答です。

この答弁が極めて重要なのは、以下の3点が初めて県議会の場で明らかになったためです。

 

  • 知事が税制審議会に「かきくけこ」(環境・教育・暮らし・健康・交通)の5テーマで諮問したにもかかわらず、わずか1回の審議で「交通税」に議論が収れんしていたこと。

  • 都道府県レベルで交通を目的とした課税を行っている自治体は全国にゼロであること(知事答弁)。

  • 共産党の松本議員が「増税ありき」の進め方を批判し、ビジョンなき課税に異議を唱えたこと。


交通税の議論の進め方には問題があったということです。



松本利寛議員の質問のまとめ


松本議員の質問は、地域公共交通の再生を軸に、大きく3つの柱で展開されています。

 

 

1. 地域公共交通の衰退と「移動権」の保障

 

松本議員は、全国で鉄道の廃止路線が294.5km、バス路線の廃止距離が13,991kmに上る現状を示し、地域公共交通の衰退が交通弱者の生活を困難にしていると指摘しました。

その上で、EU諸国の事例を紹介しています。フランスでは企業から約4,000億円の交通税を徴収してバス事業に補填し、ドイツではエネルギー税を地方公共交通に配分して1兆円超の財政援助を行っている、

と。松本議員は「いつでもどこでも誰でも自由に安全に移動できる社会の保障」を憲法上の生存権の一部として位置づけるべきだと主張しました。

また、岡山県の両備グループ・小嶋光信CEOの「日本の公共交通が民間任せになっているのが異常だ」という発言を引用し、国が財政を確保した上で公共団体が主体的に関与する仕組みを求めています。

 


2. 近江鉄道の存続問題と上下分離方式


近江鉄道沿線地域公共交通再生協議会での議論について詳しく質問し、上下分離方式(自治体が鉄道施設を保有し、民間が運行する方式)への移行、県と沿線市町の費用負担割合(1対1)、JRとの接続改善やダイヤ増便などの利便性向上策について、知事の方針を問いました。


 

3. 税制審議会の「かきくけこ」諮問と交通税への急展開


松本議員は、知事が2020年7月に税制審議会へ諮問した「かきくけこ」(環境・教育・暮らし・健康・交通の5テーマ)について取り上げ、重要な問題提起を行いました。

第7回審議会で5テーマを提示したにもかかわらず、第8回ではすでに「地域公共交通を支える税制の検討」に議論が収れんしていることを指摘し、「新たな課税ありき、増税ありきの公共交通再生策だ」と批判しました。


さらに、審議会委員からも「公共交通だけの検討になってしまっている」「増税で合意形成するというのは大変な作業」「議会のみの議論では住民全体の合意形成は難しい」といった多様な懸念が出ていることを紹介し、「新たな課税・増税を前提にした地域公共交通の再生の議論は今日まで全くなく、肝腎の地域公共交通再生のビジョンが県民に示され切れていない」と強く指摘しました。

 

松本議員は最後に、「国スポ施設整備の抜本的見直しなど歳出構造の見直しこそ必要」と述べ、増税ではなく歳出改革を求めています。

 


質問で出てきた、第7回税制審議会も見る必要があるかと思います。

 

第7回税制審議会議事概要が明かす「結論ありき」の構造

松本議員が県議会で問題視した「かきくけこ」諮問の実態を、第7回滋賀県税制審議会(令和2年7月17日)の議事概要から検証します。この議事概要は滋賀県のウェブサイトで公開されているものです。

 

知事は最初から「交通税」を名指ししていた

知事は諮問の趣旨説明において、5テーマを順に説明しています。「環境」「教育」「暮らし」「健康」の4テーマについては、いずれも「どのような税のあり方がふさわしいか」「どういう可能性があるのか」という抽象的な問いかけにとどまっています。

 

ところが、5番目の「交通」に至ると、トーンが一変します。知事はこう述べています。

「私は、交通税のようなもので、地域社会に必要な公共交通を守っていくための財源を生み出すことも必要ではないか、また、それが可能ではないかと考えている。」

他の4テーマでは「検討してほしい」「御知見をいただきたい」という姿勢だったのに対し、交通だけは知事自身が「必要ではないか」「可能ではないか」と踏み込んだ見解を示しているのです。さらに知事は閉会時に「事務方からもらっていた原稿ではないものを述べた」と認めています。つまり、この「交通税」への言及は、事務局が準備した内容ではなく、知事個人の政治的意志による発言だったことが明らかになっています。

 

5つのテーマを「公平に」諮問したように見せかけながら、知事は最初から交通税という結論を持っていた──議事概要はそのことを如実に示しています。

 

 

審議会委員自身が発していた「警告」

議事概要を読むと、複数の委員が重要な警告を発していたことが分かります。

 

松田委員は、滋賀県の行政経営改革委員会の委員としての経験から、こう述べています。「公共交通だと公共交通だけの検討になってしまっていて、横串で他の分野と横断的に考えてほしいと伝えても、公共交通だけで考えてしまうきらいがある」──これは、まさにその後の第8回で現実になった問題そのものです。

 

佐藤委員(副会長)は、合意形成について「税で合意形成をするというのは大変な作業であって、消費税を見ればよく分かる」と述べた上で、「エビデンス」の重要性を強調しています。具体的な利用状況、財政・財務状況、潜在的利用者数などを「ロジックと数字でちゃんと見せていく」ことが必要だ、と。

 

井手委員の発言は特に注目に値します。「増税の話をするときには必ず、無駄をなくしているというパフォーマンスがセットでないと住民は納得しない」と明言し、広島県のスクラップアンドビルドの事例を紹介しました。つまり、審議会の委員自身が「歳出削減なき増税は住民に受け入れられない」と指摘していたのです。当たり前ですよね?

 

勢一委員も「議会のみの議論では住民全体の合意形成は難しい」「議会の外で、住民が対話の中に入っていって議論ができるような場所も必要」と述べています。

 

 

議論の「枠組み」そのものが増税前提だった

 

しかし、これらの警告にもかかわらず、審議会の議論全体を俯瞰すると、ある重大な偏りが見えてきます。

 

議論の枠組みが、最初から最後まで「どう課税するか」「どう合意形成するか」に限定されており、「既存事業の無駄を削減して財源を確保する」「規制緩和で民間活力を引き出す」「そもそも増税せずに済む方法はないのか」という選択肢が、一度も俎上に載っていないのです。

 

井手委員のスクラップアンドビルドへの言及も、あくまで「増税を通すための前提条件」としての位置づけであり、「削減によって増税を回避する」という方向性ではありません。諸富会長(会長)の発言も、神奈川県での水源環境保全税導入の経験を踏まえた「住民参加型の増税プロセス論」であり、増税そのものの是非を問うものではありませんでした。

 

つまり、審議会の議論は「増税するかしないか」ではなく、「増税をどう実現するか」という技術論の場になっていたと言えます。県議会で知事が「特定のテーマに収れんさせたわけではない」と答弁した内容と、この議事概要の実態には、明確な乖離があります。

 

話を令和2年の県議会に戻します。 


知事の答弁のまとめ


答弁の要旨


公共交通の基本認識について: 公共交通は「重要な社会インフラ」であり、事業者だけでなく県・市町・県民が一丸となって支えなければならない。中長期的な展望の下で、持続可能な地域公共交通ネットワークの構築に「危機感、また使命感を持って」取り組む。

 

近江鉄道について: 全線存続を確認した上で、上下分離方式などの運営形態と費用負担について協議会で合意形成を目指す。近江鉄道線は「代替のない交通機関」であり「将来にわたり欠くことのできない社会資本」。

 

税制審議会について: 5テーマの「かきくけこ」を提示したが、審議会での議論の中で「交通が他の4つの分野を支えているのではないか」という意見があり、また県政世論調査で公共交通の満足度が最も低いことから、第8回で「地域公共交通を支えるための税制」をテーマとした。ただし「特定のテーマに収れんさせたわけでは現時点ございません」と釈明。

 

合意形成について: 県民との合意形成の重要性は認識しており、「丁寧かつ謙虚に議論を進めてまいりたい」。

 

全国での交通課税の実績について: 都道府県段階で交通を目的とした課税を行っている都道府県は「現時点ございません」。

 

 

問題点の指摘

1. 「収れんさせたわけではない」は事実と矛盾している

知事は「特定のテーマに収れんさせたわけではない」と答弁しましたが、客観的事実として、第7回で5テーマを提示し、第8回でもう「地域公共交通を支える税制の検討」に絞られています。たった1回の審議で5分の1に絞り込まれたことを「収れんではない」と言うのは無理があります。しかも、第8回の議題を設定したのは県側(事務局)です。審議会の「自発的な議論の結果」であるかのように見せる答弁は、ミスリーディングと言わざるを得ません。

 

2. 「全国にゼロ」の意味を正面から受け止めていない

交通を目的とした課税を行っている都道府県がゼロであるという事実は、単なる「前例がない」ということではありません。それは、他のすべての都道府県が「交通問題を増税で解決するのは適切ではない」と判断してきたことを意味します。知事はこの事実を淡々と認めるだけで、なぜ滋賀県だけが例外になるべきなのかについて、説得力のある説明を行っていません。

 

3. 「国に求める」と「県で課税する」

知事は一方で「国の財政支援の充実強化が欠かせない」と述べ、国への要望を行っていると答弁しています。しかし同時に、県独自の交通税の検討を進めています。国に責任を求めながら、県民に新たな負担を課そうとする二重構造です。

 

4. 「丁寧かつ謙虚に」の実態が伴っていない

知事は「丁寧かつ謙虚に」を繰り返しますが、松本議員が紹介した審議会委員の声──「公共交通だけで考えてしまう嫌いがある」「議会の外で住民が対話の中で議論できる場も必要」──は、まさに丁寧さの欠如を指摘するものです。この時点で、県民への十分な説明もビジョンの提示もないまま、税制の議論だけが先行していたことは明らかです。



 

 

滋賀県減税会のコメント

  

5つのテーマで始まった税制審議会が、わずか1回で交通税に収れんした経緯は、「結論ありき」の議論だったと言わざるを得ません。しかも知事自身が「全国に前例ゼロ」と認めています。前例がないこと自体が悪いわけではありませんが、前例のない課税を行うのであれば、それに見合うだけの徹底した情報公開と県民合意が必要です。

 

この時点で県が行うべきだったのは、増税の議論ではなく、既存事業の事務事業評価を全面公開し、歳出構造の無駄を洗い出すことでした。松本議員が指摘した「国スポ施設整備の見直し」も含め、支出を精査する前に収入を増やそうとする姿勢は、県民の理解を得られるものではありません。

 

 

 

次回への展望・注目点

 

2020年12月の時点で、交通税の議論はまだ税制審議会の段階にありました。しかし、「かきくけこ」から交通税への急速な収れん、知事の「丁寧かつ謙虚に」という言葉と実態の乖離、そして党派を超えた批判の存在が、この答弁で浮き彫りになりました。

 

種が芽を出し、幹へと育っていく過程を、引き続き議会録から検証してまいります。

滋賀県減税会は、県民の立場から、数値と事実に基づいた政策検証を続けてまいります。


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