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【交通税と県議会の攻防・第2回】「交通権」という美しい言葉の裏側に何があるのか

「交通権」
という美しい言葉の裏側にあるもの

この回の読みどころ


今回取り上げるのは、平成30年(2018年)9月定例会議における、チームしが県議団・井阪尚司議員と三日月知事の答弁です。

この答弁は、交通税が正式に議論される「前夜」ともいえる時期のものです。まだ制度設計の話には至っていませんが、ここで語られた言葉の中に、後に交通税へと突き進んでいく「思想の種」がはっきりと見てとれます。



井阪議員の質問──何を求めたのか

井阪議員は、次期基本構想(2030年の姿)に触れながら、大きく4つのテーマについて知事に質問しています。

 

1. 交通権と交通基本条例の制定

井阪議員は「誰もが必要なときに必要な場所へ移動できる環境を整え、交通弱者を意識した交通権を位置づけることが何よりも重要」と述べ、交通基本条例の早期制定と、知事が言及した交通税について問いました。

 

 

2. バリアフリー化の推進

ホームドアの未設置、駅舎のエレベーター整備の遅れ、視覚障害者の転落事故などに触れ、「誰にも優しい交通体系」の確保を求めています。

 

3. 鉄道の維持と活用

信楽高原鐵道の上下分離方式、近江鉄道の老朽化問題、びわこ京阪奈線構想、観光列車の導入などについて、鉄道を「守り、生かす」施策展開を問いました。

 

 

4. バス運転者不足と路線維持

運転者不足が深刻化する中で、バス路線の維持・拡大をどう進めるのかを問うています。自動運転のレベル4は2025年、レベル5は2030年としており、それまでの対策が急務だという認識が示されました。

 

 

 

三日月知事の答弁──何を語ったのか

知事の答弁を要約すると、以下のようになります。



交通政策について

  • 平成28年度から2年間、有識者による「人口減少を見据えた公共交通のあり方検討協議会」で検討を進め、平成30年6月に提言を受けた。

  • 地域公共交通は「重要な社会インフラ」であり、「まちづくり施策の一つとして充実させる必要がある」との認識を示した。

  • 今後は社会的便益の検証・可視化を行った上で、費用負担のあり方、財源確保策、交通基本条例の必要性について議論を深めていく。


 

バリアフリーについて

  • 1日利用者3,000人以上の44駅のうち40駅で整備完了。残り4駅。

  • 3,000人未満の駅、特にJR湖西線の未整備駅が今後の課題。

 

 

鉄道について

  • 近江鉄道について調査事業を進めており、今後本格的な議論を行う。

  • 近江鉄道を守ることが「びわこ京阪奈線構想の布石」になるとの認識。

  • 観光列車(SHINOBI-TRAIN等)の活用、インバウンドを含めた交流人口拡大にも取り組む。


 

バス運転者不足について

  • 全国的に深刻化しており、県内でも減便の実態がある。

  • 運転体験会、キャリアリターン制度、事業所内保育施設の設置など先進事例を共有。

  • バス通勤の促進、小学生への出前講座、バスロケーションシステムの導入等を進める。




 

減税会としてのコメント


「交通権」は誰のための概念か

井阪議員が提唱した「交通権」という言葉は、一見すると誰もが賛成したくなる美しい理念です。「誰もが行きたい時に行きたい場所へ」──反対しにくい。しかし、ここに大きな落とし穴があります。

 

「権利」として位置づけるということは、行政がそれを「保障する義務」を負うということです。

義務には財源が必要です。財源には税金が必要です。つまり「交通権」の制度化は、交通税のような新たな県民負担を正当化するための論理的な土台づくりに他なりません。

2018年の時点では、まだ「交通税」は言及レベルでした。しかし、「交通権」→「交通基本条例」→「費用負担のあり方」→「財源確保策」という知事答弁の流れを見れば、増税への道筋がすでにこの時点で敷かれていたことは明らかです。

 

 

「社会的便益の可視化」は行われたのか

知事は「社会的便益やその効果を検証し、可視化していく」と答弁しています。しかし、ここで問わなければならないのは、その後、本当に十分な可視化が行われたのかという点です。

 

「交通は社会インフラだから充実させる」という結論だけが先に走っています。「便益の可視化」は、増税を正当化するための手続き上のアリバイに使われていないでしょうか。

 

 

近江鉄道問題が示す「行政主導の限界」

知事は近江鉄道について「守ることが将来のびわこ京阪奈線構想の実現に向けた布石」と述べています。つまり、赤字路線を維持する理由として、さらに大きな構想を持ち出しているのです。

 

大きなビジョンを掲げ、そのために既存路線の赤字を公費で補填し続ける。一度構築した路線は撤退が困難で、将来世代への負債となる。「車がなかった時代の公共交通の、少子化時代において公費による維持を行うリスク」を、この時点で誰が検証したのでしょうか。近江鉄道の路線をそのままバス専用道路とバスに転換するなどの案は検討されたのでしょうか?


 

運転者不足の解決策は「官」ではなく「民」にある

バス運転者不足について、知事の答弁は「研修会の開催」「先進事例の共有」「イメージアップ」「出前講座」といった施策にとどまっています。これらは悪い取り組みではありませんが、構造的な問題の解決にはなりません。 

運転者不足の根本原因は、労働における拘束時間が長く賃金が低いという労働条件の問題です。そしてこれは、規制によって新規参入が阻まれ、市場原理が働かない業界構造に起因しています。

行政が運転体験会を開いて人を集めても解決しません。


 

この答弁の本質──「増税の種まき」

改めてこの2018年9月の答弁を俯瞰すると、その構造は非常にわかりやすいものです。

 

  1. 感情に訴える理念を掲げる(交通権、誰にも優しい交通)

  2. 危機感を共有する(運転者不足、鉄道の老朽化、路線の維持困難)

  3. 行政が解決すべき課題として位置づける(社会インフラ、まちづくり施策)

  4. 財源の議論を予告する(費用負担のあり方、財源確保策)


 

これは典型的な「増税の種まき」のプロセスです。問題提起→行政の責任化→財源論。市場原理による解決や、既存事業の見直しによる財源捻出という選択肢は、最初から議論の俎上に載せられていません。

 

 

次回への展望・注目点

2018年9月の段階では、まだ「交通税」は具体的な制度として語られてはいませんでした。しかし、この答弁の中に、後の交通税議論へとつながる思想的な骨格がすべて含まれていました。

 

「交通権」という美しい言葉。「社会インフラ」としての位置づけ。「費用負担のあり方」への言及。これらは、県民に新たな負担を求めるための地ならしだったと言わざるを得ません。

 

この「種」がどのように育ち、具体的な制度論へと変わっていったのかを追っていきましょう。




お願い 交通税反対署名、まだの方は是非お願いします!

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