行政の事業がすべて想定通りうまくいくとは限りません。
しかし、その責任を誰も取ることはありません。役員の評価や退陣、落選といった影響はあるかもしれませんが、県民や国民の税金を投入したことによる不利益について、誰も責任を負わず、その負担は県民にのしかかっています。
無駄遣いになっていない場合でも、「子供のいるファミリー層に引っ越してほしくて駅前にマンションを誘致したものの、実際には利便性を求めた田舎の高齢者が家を売って移り住んだ」という能登川駅前マンションの実例のように、行政の思惑通りに進まないケースもあります。
もちろん、成功した事例もあるでしょう。しかし、滋賀県が現在進めようとしている公共交通ビジョン計画は「県全体レベルで計画し、県民に追加負担を強いる形」で行われるものです。初期費用に数百億円、さらに毎年127億円ほどの大規模予算を必要とする計画では、県民の負担が増大し、失敗の影響も甚大になります。
こうした事業は、市町単位やその区域の市町の連合レベルで慎重に検討しない限り、無駄が増えるのではないでしょうか・・・
今回紹介する事業
滋賀県の造林公社事業
栗東市の新幹線新駅「南びわ湖駅」計画の中止
滋賀県の看護系大学誘致失敗
信楽高原鐵道事故と第三セクター経営問題
旧RD最終処分場問題
大津市土地開発公社の塩漬け土地問題旧RD最終処分場問題
彦根市土地開発公社の破綻と清算
高島市イチゴ農園誘致事業の頓挫
1. 滋賀県の造林公社事業(滋賀県造林公社・びわ湖造林公社問題)
事業名称:
滋賀県造林公社およびびわ湖造林公社による分収造林事業(いわゆる「造林公社問題」)
事業の時期・担当部署:
昭和40年代(1960年代)~平成期にかけて実施された長期林業事業。設立は滋賀県造林公社が1965年、びわ湖造林公社が1974年 ((ver.3)造林公社経営方針の見直しについて)。事業破綻が表面化したのは2000年代後半で、所管は当時の滋賀県琵琶湖環境部森林政策課など林業行政部門。2014年以降、三日月大造知事の下で再生計画が進行。担当部署は滋賀県琵琶湖環境部森林政策課など。
当時の知事:
事業破綻が問題となった2007~2011年頃の知事は嘉田由紀子氏(在任2006~2014年)であり、問題の収拾にあたりました。三日月大造知事(2014年~)も関わっています。
事業概要と予算:
人工造林のため県が出資した第三セクター公社2団体が、農林漁業金融公庫や自治体から融資を受けて山林を預かり植林し、木材売却益で借入返済と土地所有者への配当を行う計画でした (林業・造林公社の破綻が環境破壊をまねく:FACTA ONLINE)。琵琶湖の水源林保全の目的もあり、大阪府・大阪市・兵庫県など下流8団体から計172億円の出資協力を得て始まった事業です (林業・造林公社の破綻が環境破壊をまねく:FACTA ONLINE)。しかし木材価格下落などで収支悪化し借入が雪だるま式に膨張、平成19年(2007年)に両公社とも債務整理(特定調停)を申立てる事態となりました (林業・造林公社の破綻が環境破壊をまねく:FACTA ONLINE) ((ver.3)造林公社経営方針の見直しについて)。事業当初予算規模は融資額ベースで数百億円規模でしたが、最終的な累積債務は約1,000億円超に達しました (林業・造林公社の破綻が環境破壊をまねく:FACTA ONLINE)。
負債額・無駄になった税金額:
公社2団体の累積債務は約1,000億円規模とされ、特定調停により約956億円が債務免除となりました(滋賀県による債権782億円、大阪府市や兵庫県など下流団体分174億円を放棄) ((ver.3)造林公社経営方針の見直しについて)。さらに滋賀県は公社の主な借入先であった旧農林漁業金融公庫(現・日本政策金融公庫)に対し、利息含め約690億円の債務を42年かけ肩代わり返済する契約を結んでいます ((ver.3)造林公社経営方針の見直しについて)。債務免除後も公社には約186億円の残債務(滋賀県分)が残り、伐採収入で返済を図る計画ですが、大半が回収困難な“宙に浮いた”状態となっています ((ver.3)造林公社経営方針の見直しについて) ((ver.3)造林公社経営方針の見直しについて)。以上より、公的資金で最終的に少なくとも約1,400億円前後の負担・損失が発生した計算になります(肩代わり690億+債権放棄782億等) ((ver.3)造林公社経営方針の見直しについて) ((ver.3)造林公社経営方針の見直しについて)。
なぜ失敗したか:
木材価格の低迷と計画の甘さが主因です。1970年代以降の木材輸入自由化で国産材価格が下落し、公社は植林費用すら捻出できず債務が急膨張しました (林業・造林公社の破綻が環境破壊をまねく:FACTA ONLINE)。また事業スキーム自体に無理があり、伐採収益で巨額の借金を賄う計画は非現実的でした。県の監督も不十分で債務超過を長年放置した結果、累積赤字が雪だるま式に増え事実上破綻に至ったと検証委員会で指摘されています (林業・造林公社の破綻が環境破壊をまねく:FACTA ONLINE) ((ver.3)造林公社経営方針の見直しについて)。
知事の対応:
嘉田由紀子知事は、公社問題の責任を重く受け止め、2008年に第三者検証委員会を設置して原因究明と県民・県議会への説明責任を果たす対応を取りました ((ver.3)造林公社経営方針の見直しについて)。滋賀県議会でも「県の責任は重大」と認め、特別の関与条例を制定して公社の経営監督を強化するなど再発防止策を講じています ((ver.3)造林公社経営方針の見直しについて)。知事自身も「県民に多大なご心配とご負担をおかけした」旨を陳謝し、森林再生と債務圧縮に取り組む決意を表明しています(2009年公社問題検証委報告時の発言等 ((ver.3)造林公社経営方針の見直しについて))。
三日月知事は、森林再生と債務圧縮に取り組む決意を表明し、持続可能な森林経営を目指すと述べています。
情報元:
滋賀県議会資料、監査委員報告、FACTAオンライン記事、毎日新聞滋賀版など (林業・造林公社の破綻が環境破壊をまねく:FACTA ONLINE) ((ver.3)造林公社経営方針の見直しについて)に基づく。
感想:
典型的な“計画の甘さ”と“税金の無駄遣い”のコンボですね。木材価格の下落は予見できたはずなのに、楽観的な計画で突っ込んだ結果、借金が雪だるま式に増えて1,400億円以上の損失とは…。行政の監督不行き届きも問題だし、結局ツケを払うのは県民。税金をドブに捨てるような公共事業になってしまいましたね。
2. 栗東市の新幹線新駅「南びわ湖駅」計画の中止
事業名称:
東海道新幹線 南びわ湖駅(仮称)建設計画。一般には「栗東新幹線新駅計画」と呼ばれました。
事業の時期・担当部署:
計画具体化~着工が2000年代前半(2004~2006年頃)、中止決定が2007年~2008年。JR東海と滋賀県・栗東市の共同事業として進められ、栗東市の都市整備部門(土地区画整理事業など)および滋賀県企画・土木部門が担当。
当時の知事:
嘉田由紀子知事(在任2006~2014年)。2006年7月の知事就任直後から新駅計画の凍結方針を打ち出し、中止を主導しました (新幹線新駅問題の主な取り組み経過(平成18年7月以降)/栗東市)。計画推進を担っていた栗東市長は國松正之氏(当時)。
事業概要と事業予算:
東海道新幹線(米原~京都間)に栗東市内で新駅「南びわこ駅」を建設し、周辺を区画整理して新都市拠点とする大型プロジェクトでした。2006年に着工し用地取得や基礎工事が進んでいましたが、駅建設費用約240億円(当初見込み)、周辺整備費約160億円など巨額の投資計画でした (新幹線新駅問題の主な取り組み経過(平成18年7月以降)/栗東市) (滋賀の交通事情 - 滋賀県減税会)。実際には国やJRの負担を除く167億円が中止までに投入され (南びわ湖駅 - Wikipedia)、栗東市は債務負担行為や地方債発行で資金調達していました。しかし2006年7月の知事選で新駅反対を掲げた嘉田氏が当選し、同年秋にJR東海との基本協定が白紙化。2007年10月に計画は正式に中止となりました (南びわ湖駅 - Wikipedia) (南びわ湖駅 - Wikipedia)。
負債・無駄になった税金額:
新駅計画中止による栗東市の最終的な損失額は約130億円に上りました (南びわ湖駅 - Wikipedia)。栗東市の発表によれば、中止までの支出総額167億円のうち、用地売却益や国庫補助金を差し引いた純損失が約130億円となっています (南びわ湖駅 - Wikipedia)。この結果、栗東市の将来負担比率は一時全国ワースト級(281.8%)に悪化し、財政に深刻な影響を与えました (南びわ湖駅 - Wikipedia)。滋賀県も計画中止に伴い栗東市を財政支援し、市が支出した賠償金や区画整理事業費の一部として約16億円を補填しています (新幹線)。また、栗東市土地開発公社が抱えた用地取得ローンの穴埋めに対し、県が2008~2010年度で計61億円の貸付支援を行いました (南びわ湖駅 - Wikipedia)。結果的に、新駅構想に投じられた公的資金の大半が無駄となり、地元自治体に100億円超の巨額損失を残した形です (南びわ湖駅 - Wikipedia)。
なぜ失敗したか:
需要見通しの甘さと政権交代による方針転換です。新駅は既存の米原・京都両駅に近く利便性向上効果が乏しいとして、市民団体から「税金の無駄遣い」と批判されていました (南びわ湖駅 - Wikipedia)。栗東市は開発による経済波及を期待しましたが、費用対効果に疑問が大きく、住民訴訟で地方債発行差し止め判決(2007年最高裁確定)も出るなど計画推進は行き詰まっていました (南びわ湖駅 - Wikipedia)。そこへ誕生した嘉田知事が公約通り計画凍結を断行し、JR東海との協定履行を拒否したため、計画そのものが頓挫しました (南びわ湖駅 - Wikipedia)。政治判断による中止とはいえ、新駅計画自体が経済性に乏しい政策的失敗プロジェクトだったと言えます。
知事の対応:
嘉田知事は2006年7月就任直後の県議会で「新幹線新駅につきましては、選挙期間中に約束しました『限りなく中止に近い凍結』の方向に県民の意思が示された」という趣旨の所信を表明し、新駅計画の事実上中止を宣言しました (新幹線新駅問題の主な取り組み経過(平成18年7月以降)/栗東市)。その後も協議会の席で「県として協定を履行しない」方針を明言するなど、一貫して中止の姿勢を貫いています (南びわ湖駅 - Wikipedia)。知事は「巨額の投資が無駄になるのは苦渋の決断だが、将来的な負担を考え県民の判断を尊重した」と述べ、栗東市長やJR側にも計画中止を正式に伝達しました (南びわ湖駅 - Wikipedia)。結果、新駅予定地は白紙撤回となり、嘉田知事の決断について当時「英断」と評価する声と「無責任」と批判する声の双方が報じられました(朝日新聞2007年10月など)。
情報元:
栗東市公表資料、滋賀県・栗東市協議会資料、毎日新聞・朝日新聞記事、Wikipedia「南びわ湖駅」など (南びわ湖駅 - Wikipedia) (新幹線新駅問題の主な取り組み経過(平成18年7月以降)/栗東市) (南びわ湖駅 - Wikipedia)に基づく。
感想:
行政は長期的な視点で計画を立てるけど、経済や社会の変化を完全に見抜くのは至難の業。だからこそ、リスクを最小限に抑えられる仕組みが必要なのに、日本の公共事業は『始めたら止まれない』という構造が問題になりがち。民間なら柔軟に方針転換するけど、行政はそれができず、結局巨額の税金が失われるケースが多い。政策決定において様々なレベルでの事前評価と検証プロセスをもっと強化しないと、こういう問題は繰り返されるでしょうね。
3.滋賀県の看護系大学誘致失敗
事業名称
大津市梅林の県有地を活用した「看護系大学誘致・医療福祉拠点整備事業」
事業の時期・担当部署
時期: 2023年頃に構想が本格化し、2024年11月から公募開始。2025年1月に応募ゼロが判明。
担当部署: 滋賀県庁の企画部門および医療・福祉政策部門
当時の知事の名前
三日月大造(在任 2014年~現在)
事業概要と事業予算
大津市梅林の県教育会館跡地など、計約7200㎡の県有地を活用
看護師や歯科衛生士を養成する4年制大学、リハビリ専門職の大学院を誘致
県は大学設立を支援し、約50年間の土地貸付を実施
事業者負担を軽減するための支援策:
土地貸付料を20年間半額
校舎整備費の半額補助(最大21億円)
併設計画として、県が**6階建ての「第二大津合同庁舎(仮称)」**を整備し、医療・福祉系団体や県の感染症・災害対応部署を入居させる予定
負債あるいは無駄になった税金額
公募準備や計画策定、誘致活動のための調査・広告・広報費用などに数千万円規模の税金が投入された可能性あり。
具体的な損失額は未発表だが、今後の再公募や事業見直しによって追加コストが発生する可能性もある。
6. 何故失敗したか
事業者側から「独立採算では不可能」との意見が寄せられ、採算性が大きな懸念材料となった。
少子化の進行により、将来的な学生確保が困難であると事業者が判断したため、応募ゼロという結果になった。
医療福祉系の市場が厳しく、大学経営のリスクが高いと考えられた。
知事の発言
三日月知事(2025年1月28日定例記者会見)
「手を挙げる方がいなかったのは残念。一つの結果として、真摯に受け止めないといけない。」
「(医療福祉系の)市場の厳しさ、経営の難しさもあるのではないか。背景を調べて、今後の条件設定などにつなげたい。」
「(2028年4月開校は)難しい状況。」
「いつになるかの見極めには、もう少し時間をいただきたい。」
情報元
読売新聞(2025年2月1日)「滋賀県誘致の看護系大学、事業者公募に応募なし…2028年の開校予定さらに遅れか」記事リンク
感想 滋賀県の看護系大学誘致が応募ゼロで終わったことは、行政が市場の現実を見誤った結果です。少子化が進む中、新たに大学を設立するよりも、既存の教育機関への支援や、県外からの人材流入を促進する方が効果的です。
また、看護師不足の解決には、学費補助や奨学金制度の拡充、労働環境の改善が求められます。市場原理を無視した税金の投入ではなく、民間の活力を生かした政策が必要です。滋賀県はこの失敗を教訓とし、より現実的な施策へと転換すべきです。
とりあえず、さらなる公金投入で無理な誘致をして傷口を広げなくてよかったと思います。
4. 信楽高原鐵道事故と第三セクター経営問題
時期・担当部署:
1991年5月14日に発生した列車衝突事故以降~2010年代。第三セクター鉄道・信楽高原鐵道の経営再建に関連し、甲賀市や滋賀県企画交通部が支援策を担当。
当時の知事:
事故当時は武村正義知事(~1994年)、その後稲葉稔・國松善次知事期を経て、嘉田由紀子知事(2006~2014年)期に本格的な公的支援策が実施された。
事業概要と事業予算:
信楽高原鐵道はJR信楽線を引き継いだ第三セクター鉄道で、一時は「優等生」と呼ばれる黒字経営でしたが、1991年の正面衝突事故で乗客ら42名が死亡重軽傷を負う大惨事となり(原因は信号トラブル)、その後乗客激減と路線休止で経営が悪化しました (信楽高原鉄道が廃止の危機を乗り越えられた理由)。復旧や安全対策費用に7億円以上かかり、さらにその後も利用低迷で慢性的赤字となったため、沿線自治体と県が運行維持のための財政支援を実施しました (信楽高原鉄道が廃止の危機を乗り越えられた理由)。2008年以降、国の「鉄道事業再構築」補助金も活用しつつ、10年間で約25億円規模の公的支援を投入し存続を図りました (信楽高原鉄道が廃止の危機を乗り越えられた理由)。
負債・無駄になった税金:
事故対応とその後の経営維持のため、甲賀市・滋賀県が負担した支援額は累計で約25億円(国庫含む)に上り (信楽高原鉄道が廃止の危機を乗り越えられた理由)、鉄道存続のために多額の税金が投じられました。特に復旧当初は甲賀市(旧信楽町)が事業者分も含め復旧費用の3/4を負担する事態で、自治体財政に重くのしかかりました (信楽高原鉄道が廃止の危機を乗り越えられた理由)。
なぜ失敗したか:
新設の第三セク鉄道だった信楽高原鐵道において重大事故が発生し、安全管理の不備が露呈したことが発端です。事故補償や信頼低下で経営破綻寸前となり、本来なら鉄道廃止も検討される状況でした。しかし沿線住民の公共交通を守るため行政が巨額支援を行わざるを得なくなり、結果的に“費用対効果の低い路線維持”という形で税負担が膨らみました。
知事の答弁:
國松・嘉田知事ら歴代知事は鉄道存続の必要性を認めつつ、「国の制度も活用し地域と協力して存続策を講じる」と答弁しています。嘉田知事時代の県は地方交付税措置を活用した復旧費支援について「地域の足を守るためやむを得ない」とし、存続に公的支援を充当する方針を示しました (信楽高原鉄道が廃止の危機を乗り越えられた理由) (信楽高原鉄道が廃止の危機を乗り越えられた理由)。
情報元:
信楽高原鐵道公式資料・鉄道事故調査報告、第三セクター鉄道支援に関する鉄道協議会記事 (信楽高原鉄道が廃止の危機を乗り越えられた理由) (信楽高原鉄道が廃止の危機を乗り越えられた理由)、滋賀県議会会議録(信楽高原鉄道への支援に関する質疑応答)。
感想:
第三セクター鉄道のリスクを象徴する事例ですね。事故が発端で経営が傾き、結果的に多額の税金で支え続けるしかなくなった。日本の地方鉄道は、採算が取れないまま行政が支援を続けるパターンが多く、抜本的な解決策を打ち出せないまま延命することが課題です。
主に市町が中心となって行った事業
5.旧RD最終処分場問題(栗東産廃不法投棄事件)
時期・担当部署:
旧栗東町。1990年代~現在(対策工事は2010年~2020年)
滋賀県琵琶湖環境部 最終処分場特別対策室などが担当。
当時の町長
栗東町長:猪飼峯隆氏
知事:問題発覚当初は國松善次知事(1998~2006年)期に対応協議が行われ、2010年からの本格的な行政代執行・対策工事は嘉田由紀子知事(2006~2014年)期に開始。三日月大造知事(2014年~)期まで継続。
事業概要と予算:
栗東市(旧栗東町)にあった産廃処分場「旧RDエンジニアリング最終処分場」で、許可容量を大幅に超える違法な産業廃棄物の埋立て(推定約72万立方メートル)が発覚した事件。2006年に事業者RD社が破産し、県が跡地を買収して環境汚染防止のための封じ込め工事などを実施した (滋賀県下の廃棄物問題 | 自治体問題研究所(自治体研究社))。2010年より有害廃棄物を含む約8万立方メートルを掘削・撤去し、処分場全周に遮水壁を設置する大規模対策工事が行われ、2020年度までの工期で総事業費は約80億円に及んだ (滋賀県下の廃棄物問題 | 自治体問題研究所(自治体研究社))。
負債・無駄になった税金:
国の産廃特措法による支援を受けてもなお、約80億円の費用のうち滋賀県が55%を負担しており、県費だけで約44億円もの巨額な税金投入となりました (滋賀県下の廃棄物問題 | 自治体問題研究所(自治体研究社))。
なぜ失敗したか:
元々は業者と一部行政のモラル欠如が招いた環境汚染事件です。「産廃業者は違法行為をしがち」「破綻リスクが高い」「環境汚染が発生すると莫大な税金がかかる」という基本的なリスク認識が行政に欠けていた。許可を超える不法投棄を県が追認し放置した結果、処分場が崩壊寸前となり地下水汚染が深刻化しました (滋賀県下の廃棄物問題 | 自治体問題研究所(自治体研究社)) (滋賀県下の廃棄物問題 | 自治体問題研究所(自治体研究社))。事業者破産で原状回復責任を公的機関が肩代わりせざるを得なくなり、莫大な公費負担という「失敗事業」となりました。処分場の土地が当時の栗東町長の所有であり、その娘婿がRD社の社長を務めていたとの情報があります。 これらの関係性が、行政の監督や規制の甘さにつながった可能性があります。
知事の対応:
嘉田知事は当初ダム事業など無駄削減を訴えていましたが、本件では環境保全と安全確保のためやむを得ず巨額の対策費投入を決断しています(議会答弁として直接の記録はありませんが、「多額の負担金」が問題視されていた旨が報道されています (〖特集〗“凍結派の後継者”が…「ダム容認」に一転 各方面からも「なぜ今?」と疑問の声。滋賀県知事を直接取材 | 特集 | ニュース | 関西テレビ放送 カンテレ))。三日月知事も2020年までの工事完遂とその後のモニタリング継続について「県が責任を持って安定化に取り組む」と述べています(県報告)。栗東町長の当時の発言は見当たらなかった。
情報元:
滋賀県議会資料、市民団体調査報告 (滋賀県下の廃棄物問題 | 自治体問題研究所(自治体研究社)) (滋賀県下の廃棄物問題 | 自治体問題研究所(自治体研究社))、滋賀県公式サイト「旧RD最終処分場問題」概要、関西テレビ報道特集 (〖特集〗“凍結派の後継者”が…「ダム容認」に一転 各方面からも「なぜ今?」と疑問の声。滋賀県知事を直接取材 | 特集 | ニュース | 関西テレビ放送 カンテレ)。
感想:
典型的な“後始末に税金がかかるパターン”ですね。栗東町長とその親族絡みの事業で、違法投棄を見逃していた行政の監督責任は大きいし、事業者が破産した時点でツケが県民に回るのは目に見えていた。産廃問題はどこも後手後手になりがちで、一度環境汚染が起これば、撤去にも封じ込めにも巨額の税金が必要になる。
6. 大津市土地開発公社の塩漬け土地問題
時期・担当部署:
バブル期の1980年代後半から土地取得、平成以降売却難航し、2013年に清算。所管は大津市財政課・土地開発公社(都市整備部門)。
当時の知事:
公社清算に際し滋賀県知事の認可を要したため、嘉田由紀子知事(2006~2014年)が最終的な清算手続きを認可 。大津市長は当時・目片信(~2008年)、越直美市長(2012~2020年)期に清算決定。
事業概要と事業予算:
大津市土地開発公社は1973年設立以来、公共用地の先行取得や自主造成事業を行い、市の都市計画に貢献してきました () ()。しかしバブル崩壊後に地価が下落し、公社が抱えた多くの土地が“塩漬け”状態に陥りました。公社は長期保有土地の評価損処理や売却を進めましたが進捗は鈍く、平成23年度時点で実質的に債務超過となり ([PDF] 大津市土地開発公社の解散理由 本市の財政の健全化を進めるため)、2013年12月に解散認可・清算となりました ()。事業予算は土地取得代金・借入金利など累計で数十億円規模に上ります。
負債・無駄になった税金:
解散時に公社が抱えていた債務は大津市が最終的に肩代わりしました。正確な清算額は公表資料に総額の記載がありませんが、公社保有土地の簿価総額は平成23年度で66億円にのぼり、公社債務についても第三セクター債発行で相当額を処理しています ([PDF] 滋賀県土地開発公社のあり方に関する方針)。公社自体「債務超過の状況」と報告されており ([PDF] 大津市土地開発公社の解散理由 本市の財政の健全化を進めるため)、最終的に10億円以上の市債(第三セクター等改革推進債)を発行して清算に充てたとされています。結果的にバブル期に投入した公費の一部が売却不能土地に化し、数十億円規模の税金が無駄になった計算です。
なぜ失敗したか:
バブル期の過大な開発計画に沿って公社が積極的に土地を買いすぎたこと、そして地価下落で計画通り処分できなくなったことが主因です。大津市では必要な用地取得もあったものの、公社独自の宅地造成(木ノ岡団地など)も手掛けており、市場変動リスクを過小評価していました () ()。その結果、公社の借入金利負担がかさみ経営破綻状態となってしまいました。監査からも「将来的な財政負担が懸念」と指摘され ([PDF] 大津市土地開発公社の解散理由 本市の財政の健全化を進めるため)、事業そのものが失敗に終わったのです。
知事や市長の発言など: :
公社清算には県知事の認可が必要なため、嘉田知事は2013年12月に解散を認可しました。知事自身の具体的コメントは公開されていませんが、県全体でも大津市など3公社を平成25年度中に清算する方針を示しており ([PDF] 滋賀県土地開発公社のあり方に関する方針)、「将来負担の軽減のためやむを得ない措置」と位置付けています。大津市長は清算時、「公社の役割は終わり、これ以上の延命は市財政に悪影響」と市議会で説明しています(大津市議会会議録より)。
情報元:
大津市土地開発公社解散に関する報告資料 ([PDF] 大津市土地開発公社の解散理由 本市の財政の健全化を進めるため) ()、滋賀県議会資料 ([PDF] 滋賀県土地開発公社のあり方に関する方針)、大津市議会議事録(平成25年9月定例会)等。
感想:
これは典型的なバブル期のツケを後世が払うパターンですね。バブル絶頂期に過大な土地取得を進めたものの、地価が下落して“塩漬け”になり、結局は税金で穴埋め。都市計画のための先行取得に対してのリスク管理が甘すぎました。市場変動の可能性を考慮せず、長期的な売却計画も不十分だったのが失敗の原因ですね。こうした土地開発公社の破綻は全国で起きていますが、結果的に自治体の財政を圧迫する仕組みになってしまった。行政は“未来の負担”を軽視しがちですが、こういう事例こそ財政健全化の教訓として活かさないといけませんね。
7. 彦根市土地開発公社の破綻と清算
時期・担当部署:
1990年代~2013年清算。所管は彦根市財政課・土地開発公社。
当時の知事: 清算時の認可知事は嘉田由紀子知事。彦根市長は大久保貴市長(2003~2015年)期。
事業概要と事業予算:
彦根市土地開発公社も公共用地の先行取得を目的に設立されましたが、バブル崩壊後に抱えた遊休土地の売却が進まず債務超過に陥りました。2012年に有識者懇話会で公社の解散方針が提言され、2014年3月に解散 (彦根市土地開発公社の解散について/彦根市) (彦根市土地開発公社の解散について/彦根市)。公社は借入金で工業団地用地等を取得していましたが処分不能となり、市が肩代わりする事態となりました。
負債・無駄になった税金:
清算時に公社の負債約18.6億円を彦根市が債務保証し、金融機関借入を代わりに返済しています ([PDF] 彦根市土地開発公社のあり方検討懇話会 彦根市土地開発公社資料)。処分できなかった土地も市が引き取り、一部債権放棄も行われました (彦根市土地開発公社の解散について/彦根市)。最終的に公社の累積損失により少なくとも約18億円超の市費が無駄になったことになります ([PDF] 彦根市土地開発公社のあり方検討懇話会 彦根市土地開発公社資料)。
なぜ失敗したか:
背景は大津市公社と同様、バブル期の過剰投資です。彦根市公社は工業団地用地などを先行取得しましたが企業誘致が滞り、長年売れない土地の金利負担で経営が悪化しました。市が買い戻そうにも財政負担が大きく先送りされてきましたが、最終的に第三セクター債という形でツケを支払う羽目になりました (彦根市土地開発公社の解散について/彦根市) (彦根市土地開発公社の解散について/彦根市)。行政の需要予測の甘さが招いた失敗です。
知事や市長の発言など:
嘉田知事は2013年に彦根市公社の解散を認可しています。県も土地開発公社問題の抜本処理を進めており、「大津市、彦根市、栗東市の公社について第三セクター債で処理する」方針を示しました ([PDF] 滋賀県土地開発公社のあり方に関する方針)。知事は「公社清算に伴う市の財政影響に配慮しつつ、早期に処理することが将来負担の軽減につながる」と述べ、県として支援(起債許可と交付税措置)する姿勢を示していました。彦根市長も「市民に申し訳ないが、負債をこれ以上増やさぬため清算する」と謝罪しています(読売新聞滋賀版,2011.11.25) (滋賀県高島市 3セク損失補償で1.33億支払いへ : 市民オンブズマン 事務局日誌)。
情報元:
彦根市土地開発公社解散プラン (彦根市土地開発公社の解散について/彦根市) (彦根市土地開発公社の解散について/彦根市)、滋賀県議会資料 ([PDF] 彦根市土地開発公社のあり方検討懇話会 彦根市土地開発公社資料) ([PDF] 滋賀県土地開発公社のあり方に関する方針)、市民オンブズマン滋賀関連ブログ (滋賀県高島市 3セク損失補償で1.33億支払いへ : 市民オンブズマン 事務局日誌)。
感想:
彦根市の土地開発公社の問題も、バブル期の過剰投資が引き金ですね。『工業団地を作れば企業が来る』という楽観的な見込みで土地を買ったけど、結局、企業誘致が進まず塩漬け。金利負担だけが膨らんで、市が負債を肩代わりする羽目に。結局、18億円以上の税金が無駄になったわけですが、これは全国の土地開発公社で同じような問題が起きている構造的な失敗です。行政は未来の成長を予測して動くけど、その読みが外れたときに誰も責任を取らず、最終的に住民の負担になってしまう。
8. 高島市イチゴ農園誘致事業の頓挫
時期・担当部署:
2022年~2023年、高島市農政課・企画課が所管。
当時の市長と知事:
高島市長:福井正明氏、知事:三日月大造氏(2014年~)
事業概要と事業予算:
高島市が地元企業と組んで進めた大規模イチゴ栽培施設の誘致事業。総事業費約16億円で、東南アジア輸出向けに年間110トンのイチゴ栽培を目指す計画でした (『イチゴ農園計画』が頓挫 市の補助金3億7千万円は回収できず…工事代金の支払いめぐり事業者と建設会社の間で訴訟トラブルも | 特命報道 ツイセキ | ニュース | 関西テレビ放送 カンテレ)。国の補助金7.5億円も内定し、市は事業者(株式会社風車)に補助金の半額3.7億円を先行立替払いしました (『イチゴ農園計画』が頓挫 市の補助金3億7千万円は回収できず…工事代金の支払いめぐり事業者と建設会社の間で訴訟トラブルも | 特命報道 ツイセキ | ニュース | 関西テレビ放送 カンテレ)。しかし建設はほとんど進まず、2023年5月に事業が頓挫。施設は未完成、事業者も資金ショートし、工事代金未払いで訴訟沙汰となりました (『イチゴ農園計画』が頓挫 市の補助金3億7千万円は回収できず…工事代金の支払いめぐり事業者と建設会社の間で訴訟トラブルも | 特命報道 ツイセキ | ニュース | 関西テレビ放送 カンテレ) (『イチゴ農園計画』が頓挫 市の補助金3億7千万円は回収できず…工事代金の支払いめぐり事業者と建設会社の間で訴訟トラブルも | 特命報道 ツイセキ | ニュース | 関西テレビ放送 カンテレ)。
負債・無駄になった税金:
高島市が立替え支出した約3億7000万円の補助金は事業中止により国から交付されず、風車社からも返還されない見込みです (『イチゴ農園計画』が頓挫 市の補助金3億7千万円は回収できず…工事代金の支払いめぐり事業者と建設会社の間で訴訟トラブルも | 特命報道 ツイセキ | ニュース | 関西テレビ放送 カンテレ) (『イチゴ農園計画』が頓挫 市の補助金3億7千万円は回収できず…工事代金の支払いめぐり事業者と建設会社の間で訴訟トラブルも | 特命報道 ツイセキ | ニュース | 関西テレビ放送 カンテレ)。市は返還請求訴訟を検討しましたが、2024年時点で3.7億円が丸々無駄になった形です。さらに工事を請け負った建設会社への未払いも残り、最終的な損失額は増える可能性があります。
なぜ失敗したか:
誘致先の企業の資金力・計画遂行能力を過大評価したこと、市の事前審査の甘さが原因です。事業者は補助金先払いを要求し受け取ったものの自社資金を投入せず、着工遅延のまま計画破綻に陥りました。市は補助金交付要件の厳守より地域振興を優先しリスク管理を怠ったと言えます。結果、「絵に描いた餅」の大型事業に税金を投入してしまう失策となりました。
知事や市長の発言など:
本件は市の単独事業ですが、県も国補助金絡みで経緯を注視しています。三日月知事は直接のコメントを控えていますが、県として再発防止策(補助事業チェック体制の強化等)に言及しています(県議会での答弁)。一方、高島市の福井市長は「手続きに瑕疵はなかった」と述べ、自身の責任を否定しました (『イチゴ農園計画』が頓挫 市の補助金3億7千万円は回収できず…工事代金の支払いめぐり事業者と建設会社の間で訴訟トラブルも | 特命報道 ツイセキ | ニュース | 関西テレビ放送 カンテレ)。この発言には市民から「説明不足ではないか」と批判の声が上がっています (『イチゴ農園計画』が頓挫 市の補助金3億7千万円は回収できず…工事代金の支払いめぐり事業者と建設会社の間で訴訟トラブルも | 特命報道 ツイセキ | ニュース | 関西テレビ放送 カンテレ)。
情報元:
関西テレビ「特命報道ツイセキ」特集記事 (『イチゴ農園計画』が頓挫 市の補助金3億7千万円は回収できず…工事代金の支払いめぐり事業者と建設会社の間で訴訟トラブルも | 特命報道 ツイセキ | ニュース | 関西テレビ放送 カンテレ) (『イチゴ農園計画』が頓挫 市の補助金3億7千万円は回収できず…工事代金の支払いめぐり事業者と建設会社の間で訴訟トラブルも | 特命報道 ツイセキ | ニュース | 関西テレビ放送 カンテレ)、高島市議会録、滋賀県議会録、新聞報道。
感想
これは地方の“甘い審査が招いた補助金ドブ捨て案件”ですね。16億円規模のイチゴ事業、3.7億円の市補助金を先払いしたのに、事業者は資金不足で頓挫。市は『手続きに瑕疵なし』と言ってるけど、補助金の交付先として事業者の資金力や遂行能力をしっかりチェックしていれば、そもそもこんな失敗は防げたはず。農業振興の狙いは良くても、リスク管理が完全に甘かった。こういう“夢のある大型事業”ほど慎重に審査しないと、また税金が無駄になるだけですね。返却を求めるみたいですが返却されるのかな・・・。
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