滋賀県は「参加型税制」として、県下を6地域に分けてそれぞれの地域で県民に地域交通の課題と解決案を話し合わせ、そして交通税導入の是非を検討させる「地域交通ワークショップ(以下WS)」の参加者募集を開始。1回目で出てきた地域課題などを参考にしながら2回目WSで話し合うため、参加者は原則として2回分の参加を依頼されます。
その第1回目を令和6年7~9月に開催しました。
2回目は令和6年12月~1月2開催されます。
会員JUNが、その1回目の初開催である米原市のWSに参加。
メディアはもちろん三日月大造知事も来られていました。
私(ゴル子)は9/7、彦根市減税会長は9/8、大津市のメンバーが9/8の南部地域に参加致しましたが、メディアは少なく、知事は来られていませんでした。
※この記事は、9月7日の東近江市のWSを中心に構成しております。
受付
まずは受付を済ませたら、会場までの交通費を受け取ります。車の場合は往復の距離でガソリン代を計算しておられました。
そしてその際に、座る場所の指示があります。
参加者を3つのグループに分け、それぞれのグループで話し合います。
私達減税会メンバーは全員がメインファシリテーターのグループにいました。
各グループは、大体9名くらいで、交通関係事業者3名(オブザーバー/発言なし)、希望参加者2~3人、県からの依頼で来られた方3名くらいという構成です。
私のグループは近江鉄道、湖国バス、東近江市交通課、もう1個交通業者(失念)、八日市商店街の重要なポジションの方、駅を管理する公益法人のトップ、地元が竜王町の若い神奈川県在住の20代男性、年金暮らしの方と私。
「県に頼まれたから来た」とおっしゃっている方が、どの回でもテーブルに3人くらいおられました。
お菓子いただきました。文字通りのタックスイーティングです。
ただ、会場は飲食禁止だったので持ち帰って食べるようにと、、、
資料には東近江市の課題などが記載。
東近江市は交通税の発端となった近江鉄道の駅が一番多く、JR本線も通っていないことから近江鉄道は非常に重要な交通インフラでした。
しかし40年ほど赤字です。黒字路線は9つ中2つのみ。
さあ、どういう話になるか・・・
ワークショップの流れ:前半
1. 開会挨拶
2. 主に開催地域の公共交通の現状、問題点の説明
3. 滋賀の交通ビジョンの経費が年127~128億円という簡単な説明
4. グループワーク。自己紹介の後、ディスカッション
① 1週間に何日出かけているか
② どこへ、何のために、どのように移動しているか
③ したいのに現在で来ていない移動は?
④ したくないのにせざるを得ない移動は?
⑤ もし制約がなければ、どこへ何のためにどのように移動をしたいですか?
⑥ 移動がこうなったらいいなと思うことは?
上記の内容について自分の思うことや現状などを、まずは手元の付箋に書きます。誰が書いたか判るように名前も記載します。
そして、ファシリテーターが① 1週間に何日出かけているかというテーマについて一人ずつ付箋を受け取って模造紙に貼り付け、付箋を書いた人が説明する・・・ということを6回分繰り返していきます。
ワークショップの流れ:後半
グループワーク2
財源を含むギャップの解消方法について
① 疑問に思うこと
② 不安に思うこと
③ こうなったらいいなと思うこと
④そのために私はこうしたい
話し合った後、各グループごとに発表、挨拶、解散でした。
参加者の発言
(主婦)コンサートに行った帰り、家に帰るまでの公共交通がないので一泊しないといけないので無駄なお金がかかる→その分、家賃や土地代が安い
(高校生)お父さんに迎えに来てもらうのが申し訳ない→迎えに来てもらわなくても大丈夫な状況というのは、相当経費が必要。便利を求めただけどんどん補助金と税金は増えていく(後述)
(高校生)1本逃すと30分待たないといけない、乗り継ぎも悪い。→それじゃないと採算が取れないから。その分、家賃や土地代が安い
もっと電車の本数が増えてほしい→同じ。気持ちはわかるけど。
(50代男性)先程、交通ビジョン経費は年127億、それ全員で割ったら8000円強と言う話を県がしていたけど、こういう数字をそのまま受け止めてはいけない。もっと増えることも考えられる。地域交通は経済とリンクして考えないといけない。バス停も既得権になっているから、意味のないところにもあるので、バスを一度全部廃止して、本当に足らないところを見た方がよいのではない
公共交通はすべて税金でやるべき、道路も我々は支払ってできたものではないでしょう。→道路、払ってます。便利と引き換えに強制的に徴税され、自分の自由に使えるお金がかなり減ります。
人口減は止まらないため、税金で地域交通を支えることは無理。負担がどんどん増える。 国民負担率の簡単な説明をし、それを理由に高校生も参加していたので、その子たちが社会に出る時にもっと負担の高い大変な時代になるから、交通税はやめるべき。 公が民間に関わることはやめて、不要なものは縮小されることで必要なサービスが生まれ伸びる部分もあるのだから市場原理を活かすべき。ライドシェア解禁など
(年配の男性)大阪で飲んで滋賀県まで戻って来るとなると、大阪を22時に出なくてはいけない。終電がもっと遅くまであってほしい。→その年に数回のために支払う税金は、その時の宿泊代よりも高い可能性もあるし、大阪や京都まで何回も飲みに行かない人もその採算の取れない赤字分を税で補填する事になってもよいのか
(40代男性)高校生も参加していたが、その子たちが社会に出る時にもっと負担の高い大変な時代になる
(40代女性)バス路線を通す費用や追加ダイヤのためには、事業者の経費がかかる。採算取らせるために税金払う場合、その恩恵より出ていくお金使われるお金の方が多くなる可能性もある
(大学生)補助金で賄うとして、足りるのだろうか?
(50代女性)人口を増やしたり人流を増やすこと、県には企業誘致に力を入れてもらいたい
(50代女性)人口が減るのが解っているのに公金を使ってまで交通網を整える事に不安
(50代女性)予算が25億が125億にふえているけど、このお金を子ども達が払うと思うと心配
(50代女性)国民負担率48%くらいだけど健康保険とか入れると6割なんで6月いっぱいまでは税金の為に働いてるから、これ以上の税金負担はむり
(私)交通税ありきではないか?アンケートは誘導的な上、パブコメも情報公開請求をかけて原文を見たが、県のやり方は公正とは言い難い。
(男性)交通税は仕方がないと思う
(男性)駅の命名権を企業に渡す代わりに、駅の保守や運営をその企業にしてもらうのはどうか
(ほとんどの参加者)近江鉄道がなくなったら東近江は終わる→反論下記
(男性)「このワークショップは交通税関係ですか」?→「そうではないです。お金で解決できるレベルではないので」とファシリテーターが回答
(男性)完全ライドシェアは必ず近いうちに解禁される。そのことを前提に計画を立てないといけない。
(私)交通税について、県は事務事業評価をやってないから、予算の具体的な内容について無駄があるともないとも判断することが出来ない。その状態で交通税などの交通ビジョンの財源について県民に是非を検討させるのは頭がおかしいとしか思えない。東近江市の事務事業評価(見やすい)や彦根市の吉田寛先生の公会計を参考にしてほしいというと東近江市の役所の方が喜んでおられた笑
(男性)環境のことを考えてCO2を減らすためにも車から電車に変更させるべき
(私)国民負担率高いから絶対交通税反対(同じ年収1000万円の人でも30年前と今じゃ、手取りが100万単位で違うなど、具体例あり)
近江鉄道がなくなったら東近江は終わる!?
ある方がそのように発言されました。
そしてそこにいるほぼ全員が、そうだよねと完全同意。地域のためにみんなで支えなくてはいけない、と。
しかしここは反論しました。以下は完全再現ではありませんがその内容です。
「近江鉄道がなくなったら困るという考えは理解できる。実際にJRに接続するのに近江鉄道がないと厳しいからです。だけど、それで困るとしたらどうなりますか?困ったら困ったままにしますか?そんなことはないと思います。ニーズが有るならビジネスも生まれます。誰かが今一番小規模で採算が取れるサービスを考えると思いませんか。そうなるように、規制緩和で新規参入をしやすくすると良い。そのように、近江鉄道がなくなった場合に生まれる新しい未来を想像しても良いと思います。近江鉄道ありきで考えることも、発展や根本的解決にならない可能性があります。もちろんこれは、近江鉄道を潰すべきということではありません。」と近江鉄道の方の前で発言しました。いや、私も近江鉄道愛はありますよ!私、東近江市生まれなので。
商店街の方は「近江鉄道は重要ではあるとは思うけれども、税金で上下分離方式を行うことについては自分の周りの人の殆どは反対していた」とおっしゃっていましたし、私の発言を聞いて「確かに、バスへの転換などコンパクトサービスへの転換も考えられますね」とおっしゃった方がおられました。
その後、3つのグループがそれぞれ発表しました。
どの回でもどのグループでも、三者三様だったようで、かなり好き勝手に言いたい放題のグループもあったようでした。それを拾い上げて実現しようとされると苦しいなと思いながら聞いていました。
全てにはお金がかかるし、国のお金も県のお金も全部、元はというと自分や誰かの税金なのですが、それを認識されている方はやや少ないように感じました。
交通関係者の発言
そして、JRとその湖国バス、近江タクシー、近江鉄道が現状報告をされました。
JR:本数を増やしたいのはやまやまだが、車両・乗務員・動かすお金などを考えると難しい
湖国バス:従業員が足りない。新卒が来ても辞めていく。長浜から人を借りている。
近江鉄道:運転部門と経営方面と2部に分かれている。ガチャコン祭りではホームにあふれるほどの人が来て盛況だった
雑感
参加者の発言をお読みいただければお分かりいただけると思いますが、多くの方が経費について考慮することなく不満や要望を口にされています。確かに滋賀県の不満第一位が公共交通なのは間違いがありません。ですが、必ず何かが不満1位になります。滋賀は交通が不便です。でもその分、田舎の素晴らしさがあり、土地や家賃も大阪や京都に比べて安いのです。それをすべて行政で解決するのは無理が生じます。
滋賀県交通戦略課の掲げる、「誰もが行きたいときに行きたい場所へ行ける滋賀」を目指すなら、せめて京都くらいの交通の便が必要かと思いますが、田舎の滋賀県でそんな交通環境を作ろうものならどれほどの赤字になると思いますか?
例えば蒲生郡日野町の山奥や大津市朽木、長浜市余呉町でも20~30分に1本はバスがあり、JRの終電も遅く、大阪にコンサートに出かけても家に当日中に帰れる、バス停への家からの近い・・・だなんて、どのくらいの無駄な経費がかかるか想像してみてください。
毎日空気だけを運ぶバスが何本も税金使って走っているのを見たら、さすがに「無駄すぎる!廃止しろ」とみんな思うことでしょう。
滋賀のこの人口密度で、そして少子化の波が来ている中で、公共交通が充実したら発展するのでしょうか。交通の便が良くなれば経済発展するから、人口が増えるから、福祉や教育への恩恵があるから赤字でも税金増えても大丈夫!だなんて、楽観的に考えることは出来ません。
交通税を導入すれば、一部の業界へ税金が安定的に流れます。
税金でなんとかするよりも、時限的減税や規制緩和で一般企業が参入しやすいようにして様々なニーズに合わせたサービスが生まれるよう促すほうが、企業の邪魔もしないし手元のお金が残り、それで人生を設計することが出来ます。
微額ずつ税金は増えていき、気がつけば稼ぎの半分が徴税されている今の日本。
これ以上税金を増やさなくても、もう十分納税しています。
「足りないから増税」では、本当に税金は上がっていく一方です。ここまで来たのにそれでもまだ追加で税金を取れだなんて、知事や一部の賛成議員は政治家として仕事をしているとは思いません。もし本当にバスを増やすべき地域があるとしても、補助金などをはじめとした無駄を徹底的に省くことで交通税なしで対応できるはず、というか対応しようとしなければいけません。
これまでの高福祉は高度成長期と人口増があって出来たことでもありました。今はそれらがないなら、それを無理やり維持するために増税するよりも、そして政府や行政にお金を払って頼るよりも、自分たちや民間企業で対応できるところは対応するなど、時代に合わせた新しい考え方も持続可能な社会のためには必要だとは思いませんか。
ということで、次回、12月~1月のワークショップ第2回も参加します。
ご紹介
必見、滋賀維新の会の田中誠議員の議会での質疑。
47分まるまる交通税や交通ビジョンのお話でした。
滋賀維新の会は去年の選挙の際に交通税反対を表明されていましたが、このように実際に質問されているようです。
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