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執筆者の写真喜多G13

「ポートランド」の実情(1) 地理と公共交通


ポートランドの主要駅の一つである、ユニオン駅


2023年10月28日に草津市のイオンモール草津で開催された県民フォーラムにおいて、アメリカ合衆国のオレゴン州のポートランド市が交通税を導入し、都市開発に成功した都市として上がっていました。そのポートランド市ってどんなところなのでしょうか?


滋賀との共通点や、滋賀の公共交通において参考になるポイントはあるのでしょうか?

県が説明していなかったポートランドの実情を調べてみました。

  


ポートランド都市圏の概要


ポートランド市は、アメリカ西海岸のオレゴン州の北西部に位置し、コロンビア川とウィラメット川の合流地点に建設されています。オレゴン州は本州及び四国を合わせた面積にほぼ等しいようです。ポートランド市と周辺の自治体とともに構成される、「ポートランド都市圏」の中心を担っています。


オレゴン州は富山県など日本の都市とオレゴン州内の都市との間で、20 都市以上が姉妹都市提携を締結している、非常に親日的な地域といえるでしょう。


市内は美しい自然環境に囲まれ、山々や川が特徴的です。環境に優しい都市としても有名で、持続可能な開発と緑の取り組みが進んでいます。

 

実は私は2014年に仕事で2日ほどオレゴン州に滞在しました。その時にポートランド国際空港→ユニオン駅→長距離バスに乗車してユージーンへ行ったため、ポートランド市は経由したのみなのですが、自然も豊かで心地よく住みやすそうな印象を受け、もし自分がアメリカに住むならオレゴン州がいいなと思ったほど、ポートランドを含めた街の印象は良かったのを覚えています。実際、全米住みたい街、住みやすい街ランキングで上位だとか。


そんなポートランドの公共交通はというと、全米No.1空港にも選ばれたことがあるポートランド国際空港がある他、ライトレールなどの公共交通も発展し、また、自転車での通行が便利な都市としても知られ、自転車レーンやシェアサイクルなどもが整備されています。また、ライドシェアも解禁されています。


そのように、ポートランド都市圏には公共交通ネットワークが構築されており、更には、自動車の利用に抑制的になるような様々な開発や制御が進められています。


その公共交通の充実ぶりは、交通と街づくりの成功モデル(?)として世界的に非常に有名であり、日本では滋賀県や埼玉県、北海道など複数の自治体がポートランド都市圏の公共交通の充実と、それによる都市開発について言及しています。


しかし・・・その都市開発については、アメリカ保守系の人たちのみならず、都市開発を良しとする市民までもが疑問を感じているようです。


とある公認会計士さんの2022年のブログでは、ポートランドは「全米一税金が高い都市」であることが記載されています。ただし、消費税はありません。

 

  

 



ポートランド市の人口と人口密度

市内は約65万人、ポートランド都市圏では約185万人(2020年)です。

人口密度は都市部では1,407.8 /km2と、守山市1,493 人/km2と同等くらいの人口密度です。


参考までに滋賀県の近江鉄道が走っている市の人口密度を挙げます。

 

彦根市 :577 人/km2

東近江市 :290人/km2

近江八幡市:457 人/km2

甲賀市 :183 人/km2




 


ポートランドの公共交通


TriMet(トライメット)による運営

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TriMetはオレゴン州法に 基づき設立されたポートランド都市圏で公共交通を担当する機関で、バス、ライトレール(LRT)、ストリートカー(路面電車)、ロープウェイを運営しています。


 


乗車方式


日本ではほぼ行われていない信用乗車方式が取り入れられています。

これは乗客が目的地までの乗車券を購入して乗っていることを信用し改札などを設けない仕組みです。欧米の鉄道ではこの信用乗車方式が広く採用されていますが、覆面係員が巡回しており、乗客に対して抜き打ちチェックが実施されます。不正乗車に対しては多額の罰金(250ドルとか)を請求するようです。


ポートランドの不正乗車率は統計上、5%程度とのこと。


TRIMETホームページより拝借。かっこいい。



  1. MAX(メトロポリタン・エリア・エクスプレス): MAX(Metropolitan Area Express)と呼ばれるライトレールは市内や近郊を結ぶ広範なネットワークを有しており、ポートランド中心部は道路上を、郊外では専用軌道を走行しています。




専用軌道は、平地でも高架線などでなく地上を走行し、踏切もあります。

メトロポリタン・エリア・エクスプレスは、ポートランド都市圏をカバーするライトレール・システムで、市内中心部から近郊や空港などへのアクセスが可能です。


ポートランド国際空港からダウンタウンへは約40~50分ほどで着きますが、料金は大人で2.5ドルです。激安。



バス:

TriMetの運営するバスは、市内や郊外をカバーしています。多くのバス路線が運行され、市内の主要なエリアや公共機関へのアクセスが容易です。



ストリートカー(路面電車)


  • ポートランド市内にはストリートカー(路面電車)が運行されており、主にダウンタウンや周辺エリアで利用されています。これは観光地や主要なショッピングエリアへのアクセスを提供しています。

  • 2001年に最初の区間が開通した後は、2015年まで徐々に拡充されてきていました。

  • 路面電車の開発は、市内のパール地区にある路面電車の路線周辺の都市開発を期待してのことでした。

  • なお、この路面電車の初期開発には、約35億ドル(当時1ドル115円なので4000億円くらい?)が費やされたようです。

  • それ以外にも一部の保守派は、路面電車はバスと同じ働きをするがコストが何倍もかかるので税金の無駄遣いだと常に指摘していました。しかし最近は保守派のみん貼らず多くの一般市民がその有用性と税の費用対効果を疑問視しているようです。

  • 移動速度が遅く、費用もかかりすぎで、輸送可能人数も少なすぎるサービスに、公費が吸い取られているのではないかという懸念があるようです。

  • また、開発には路面電車の環境整備のみならず、都市開発などにも公費が使われましたが、それが適切だったか疑問に思う人も少なからずいるとのことです。

  • ガーディアン紙「欲望の路面電車:アメリカの都市は路面電車の建設に執着しすぎ」https://www.theguardian.com/cities/2015/feb/20/streetcars-of-desire-why-are-americans-obsessed-with-building-trams もポートランドやアトランタ、シアトルの路面電車に言及した興味深い記事でした。



バイクシェア(自転車):

  • ポートランドではバイクシェアプログラムが存在し、市内で自転車を借りて利用することができます。これは短距離の移動に便利で、環境にも配慮された交通手段として人気です。



気になる運賃と補助金は?

トライメットの資料を見ると、2016年度の収入5.42億ドルのうち運賃収入は1.18億ドルと約22%。税金収入が3.25億ドルと70%以上を閉めています。

支出は6.32億ドルとなっており、9000万ドルの赤字です。

それでも、公共交通を市民に行政が提供するべき「公共サービス」として位置付けているので問題がないという考え方をしているらしいです。



公共交通指向型開発として


公共交通指向型開発(TOD=Transit Oriented Development)は、公共交通システムに沿って中密度または高密度の住宅やショッピング施設、業務施設等を含む人々の暮らしと関連した様々な施設を統合的に開発するコンセプトです。


このアプローチは、アメリカのクルマ社会で特に重要視される傾向があり、今はやりのサステイナブルな都市を構築しようと、自動車への依存を減少させ、生態系に配慮することを目指した都市整備や開発を行います。


ポートランド都市圏ではその具体的な取り組み内容として、MAX(公共交通システム)沿線ではTODが進められ、オレンコ・ステーション地区がその代表的な例として挙げられます。この地区では、駅や商業施設、住宅、公園などが徒歩圏内に配置され、1997年から2017年にかけて開発が進みました。



今日はここまで

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