法人税増税に対するよくある主張とその反論
- 喜多G13
- 8月18日
- 読了時間: 4分
「増税しても私たちには関係ないよね?」
「法人税なんて企業の問題っしょ?」
そう思ってしまうのも無理はありません。
ですがそれは大きな間違いです。議員さんですら認識が間違っています。
先日、とある甲賀市の議員さんと交通税についてお話したときに、「交通税が例えば法人税の増税だとどうですか?それだったら県民には影響はないでしょ?」と質問されました。
「法人所得税は次年度への投資や人件費など全ての経費を除いた利益への課税なのだから、県民の手取りには関係がない」とおっしゃいました。
「私は実際、法人経営していますが人件費や投資に影響がないなんて全く思わないですよ?」と言いましたが、理解できていないようでした。
ということで、国の方で法人増税の話も出てきてしまったので今日は法人税増税に対する誤解とその影響を解説!

法人税と従業員への影響の関係がわかる
よくある誤解への具体的な反論が理解できる
法人税政策が社会に与える影響を知れる
「増税しても一般国民には関係ないよね?」に対する反論!
1. 利益は“余ったお金”ではなく“未来への原資”である
法人税は、企業が人件費や原材料費、各種経費を払った後の「利益」に対して課税されます。一見、それなら「企業が儲かったんだから、税金を取っても問題ない」と思うかもしれません。
しかし、企業にとってこの利益は、未来の投資に回すための極めて重要な資金源です。
例えば:
生産性を高めるための設備投資
従業員の賃上げやボーナス
新規事業への挑戦やR&D(研究開発)
法人税が上がるということは、こうした未来の成長に回す資金が削られるということです。
結果として、企業の競争力が低下し、雇用や給与、経済全体にまで悪影響が及ぶのです。
2. 「人件費として払えばいい」は現実を無視した暴論
「税金を払いたくなければ、人件費として従業員に払えばいい。だから人件費が増える!」という声もあります。しかし、これは経営の現実をまったく理解していない意見です。
一度上げた給与は簡単に下げられず、固定費化して企業リスクが高まる
無理に人を増やしても業績に結びつかなければ経営悪化を招く
労働の対価を超えた報酬を出すことは、組織の健全性を損なう
つまり、「税金を回避したければ人に払え」という考え方は、健全な企業運営とは真逆なのです。
3. 「投資は経費になる」は税務と会計の誤認
「投資は経費になる。そのうえで残った利益から徴税する法人税が上がっても問題ないでしょ?」という声もあります。しかし、これは税務と会計の違いを理解していない誤解です。
設備投資は「減価償却」という形で、複数年に分けて経費処理される
キャッシュ(現金)は今すぐ出て行っても、税金はすぐには減らない
さらに、内部留保を溜めることに対して「悪」のイメージが広まっていますが、実際には将来の投資準備や景気変動への備えとして、企業の持続性を支える重要な資金です。
法人税の増税は、こうした将来への投資をじわじわと削り、日本企業全体の競争力を低下させる原因になります。冒頭の議員はここを特に理解されていないと話していて感じました。
また、大企業や利益を生んでいる企業を毛嫌いする人もいますが、誰かのためになる事業を行っている企業、雇用も生むことで人や国を助けている企業ももちろんあります。すべての大企業を否定することや利益を残すことはだいたい悪だとすることは、やや乱暴ではないかと思います。
4. 「潰れなければいい」という話ではない
「法人税を上げても、どうせ大企業は潰れない」と考える人もいるかもしれません。しかし、問題は「潰れるかどうか」ではなく、企業がどれだけ国内に価値を残せるかという視点です。
法人税が重くなれば、企業は以下のような行動に出る可能性があります:
賃上げを見送る
国内での採用を抑える
生産や投資の拠点を海外に移す
本社機能まで海外へ移転する
これらはすべて、日本国内の雇用や所得、地域経済への悪影響を意味します。
結論:法人税増税は「企業と国民の未来」を同時に削る
企業が利益を得ることで、そのお金は以下のように社会に循環します:
労働者への分配(給与・ボーナス)
設備や技術への投資
新たな雇用の創出
地域社会や取引先への経済波及
つまり、企業の利益は「単なる儲け」ではなく、経済の血液です。
その循環を安易に税金で止めてしまえば、日本全体の成長、雇用、賃金上昇の余地が削られてしまいます。
「企業が払えば済む話でしょ」という考え方は、その先にいる従業員・家族・地域・未来世代を見落とした、非常に短絡的な発想であることを、もっと多くの人が理解する必要があります。