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​2022年10月実施
交通アンケートに対する疑問

昨年10月、滋賀県により「滋賀県の公共交通の現状および意向に関するアンケート調査」が行われました。

ですがこのアンケートの妥当性に疑問があります。

以下に現時点における疑問点をまとめています。

アンケート疑問点の概要

疑問1:回答者の地域に偏り​がある

疑問2:年代比に偏りがある

​疑問3:誘導的な質問

疑問4:調査会社が土木コンサル系企業

調査​概要

○ 実施時期 :令和4年10月11日(火)~令和4年10月31日(月)
○ 実施内容 :滋賀県内の住民を対象とし、以下内容を把握
1.回答者属性
2.県内で利用する公共交通の状況
3.公共交通の現状に対する認識
4.新たな費用負担に対する意向
5.公共交通に求めるサービス水準
6.公共交通サービス向上に向け、必要な取組
7.自動車から公共交通への転換に向けた意向


実施媒体 

①住民アンケート(郵送・WEB)
※無作為に抽出した県内各市町350世帯、計6,650世帯対象
②県民アンケート(WEB)
※滋賀県HPにQRコード掲載

 
回収数 :計2,997通
(回収率40.6%)

実施会社

パシフィックコンサルタンツ株式会社​ 滋賀事務所

※調査会社ではなく、全国に実績がある土木コンサルタント会社です。

2025年の国スポの会場である彦根総合運動公園(総工費約200億)などにも関わっておられる大手のようです。よろしければ評価を検索してください。

 以下はアンケートです。どんな設問があったか、どんな情報提供があった上でのアンケートだったかご確認下さい。

1.回答者の地域に偏りがある
アンケ比率.png

回答者の地域に偏りが生じており、

「近江鉄道沿線に住む方」

の意見が分析結果に出てきやすくなっています。

N=の横の数字は人数です。

大津と南部地域の人口は滋賀県全人口の48.7%ですが、設問回答者の同地区の割合は32.3%と、

実際の割合と比べて-16.5%

の差があります。

そして近江鉄道のある東近江、湖東、甲賀地域ですがこちらの人口は滋賀県全人口の37.2%となります。

設問回答者での同地区の割合は52.0%で、

全人口割合に対して+14.8%となっています。

今回、アンケートは

無作為に抽出した県内各市町350世帯計6,650世帯対象

に送付されています。

そのように聞くと、

「どのような地域も平等に調査している」と思える人もいるかもしれませんが、このやり方ですと人口の多い大津市も、田舎の市町も、同じ扱いとなります。「人口比に合わせるのはどうか」と思う方もおられるかもしれませんが、実際の声を聴くことと、アンケートの数値の正当性はまた別の話です。

 

確かに​近江鉄道のある地域は返送率が高くなるのも当然かとは思いますが、人口減少傾向にある近江鉄道沿線住民の意見が本来の人口比に比べて大きく、その他の市街地の意見が小さくなるという結果が抽出されています。(偏り1)

※誤解がないようお伝えしておきますと、私たちは近江鉄道沿線に住む方や高齢者の方の利便性をないがしろにするつもりはまったくありません。

2.年代の偏り
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■年代別回答者割合

10代・・・0.9%

20代・・・4.8%

30代・・・9.2%

40代・・・16.1%

50代・・・15.8%

60~64才・・・10.0%

65~69才・・・10.1%

70才~・・・33.2%

いやあ、すごい高齢化社会ですね!

65歳以上が43って、滋賀はそんな県じゃありませんよ笑

ですが、本来の滋賀の10~64歳と65才以上の人口比率は、関西広域連合令和2年度データよると

10~64歳約70%、65才以上は約30%です。

これはアンケートの送付が主に郵送で行われたということもあり、これも高齢者の意見が有利となっています(偏り2)

 

本来は鉄道を使う可能性がある全年代の意見を公平に抽出しそこから考えていくために行うアンケートであるべきではないでしょうか?

​■(偏り1)(偏り2)の結果

このアンケートについては、①地域、そして②年代という、ふたつのデータの偏りが組み合わさっているため、結果として、行政の望む方向に誘導されているように私たちは感じています

3.誘導的な質問

このアンケートでは集計の結果、

維持に必要な費用(運賃以外)を一部負担しても良いと思うか」という質問に対して、

 

「思う」は27%、

「どちらかと言えばそう思う」が36%。

「思わないが負担はやむを得ない」の14%

を加えると、是認したのは77%でした。

 

​ですが、回答項目5つのうち3つが「是認」というのもあまり良いアンケート設計ではありませんね。

そしてその、問題の設問がこちらです。

Q4-1公共交通の維持(現状の運行本数等のサービスレベルの維持)に関してお尋ねします。あなたは維持に必要な費用(運賃以外)を一部負担しても良いと思いますか。(負担金は運行経費・車両維持費に対する補てん等の公共交通の維持に活用すると想定してください)

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維持のための負担をしなかった場合

​赤字が続き公共交通が廃止され、高齢者等の移動が不便になる恐れがあります。またその移動支援のために税が使われ、交通以外の市民サービスも対照的に低下するおそれがあります。

投資のための負担をした場合

サービスレベルが維持または改善され、公共共通の利便性が向上し、利用しやすくなります。

このふたつを設問と回答の間に入れているのはなぜでしょうか。

「正しい回答をしていただくため」

だとしたらもっと情報の具体性が必要です。

「維持のための負担をしなかった場合」の文章は特に、不安感にのみに焦点を当てています。
 

事業予算を通すため、このような手法を使ったと取られても仕方がありません。

増税しなくても現行の予算範囲内でやりくりできることや、

もっと経費の掛からない行政の示す改善案以外の方法があるかもしれないことを知らない県民は、このような誘導があれば交通弱者のためにと事業を是認してしまうのも無理はありません。

追加負担、つまり増税を容認させるための調査内容であると感じました。

交通アンケートの妥当性を問題としている新聞記事

​また、アンケート設問前の情報提供ではこのような情報の記載がありました。これを読めば、どう回答したくなるでしょうか。

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4.調査会社の選定が不適切?

契約期間:令和4 年5 月24 日 ~ 令和5 年3 月31 日

契約会社:パシフィックコンサルタンツ株式会社 滋賀事務所

上記の偏りがあったことで一般的なアンケート会社に依頼したかが疑問で調査したところ、本件アンケート調査、および、事業の試算について、調査専門の会社ではなく、土木コンサルタント会社が受託し、行っています。

アンケート結果を基にどのくらいの経費が掛かるかを試算するためには、土木コンサルタント会社に依頼するのは効率は良いかもしれません。

しかし、本件を受託したパシフィックコンサルタンツ株式会社は、これまで滋賀県からの土木工事を複数回受注しており、この広域交通網が事業化されたときに工事業者となれる立ち位置にある会社です。

客観的に見ても、交通ビジョンが通ったら事業の委託候補先になり得る会社であると思うのですが・・・そのような会社なら、

 

意図的に「交通ビジョン事業が必要である」という結果を生むアンケートを作った可能性があると勘ぐってしまいませんか?

果たして本当に公正なスタンスで調査がなされるものなのか、誰でも疑問に思うのは当然ではないでしょうか。

 

確かに事情の分かる、信用できる業者に事業の事前調査をさせるケースは公共事業においてあるものと聞いております。

 

しかしこの会社は、これまで談合などによる指名停止処分を受けたケースがが数度あり、さらに、今回の調査直前には富山市での官製談合事件で逮捕者を出しております。

 

​そのことが分かっていて契約したのでしょうか。

この談合事件については、下記の資料をご参照ください。

建設コンサルタント業者に対する登録停止措置について​(国土交通省の記者発表資料)

 

こちらの資料によると、2019年の富山市の官製談合を巡る訴訟で2022年1月に逮捕されたパシフィックコンサルタンツ社員に対して、2022年6月29日までに有罪判決が確定しました。

そのため、同社の建設コンサルタント登録は2022年10月21日から60日間停止されていました。

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また、上記の資料は、滋賀県とパシフィックコンサルタンツ株式会社の随意契約に関する資料です。

通常こういった多額の費用が発生する公共事業は、入札制度を使って公正に事業者を選ぶ必要がありますが、この交通アンケートに関しては「専門性が高いため」として、プロポーザル形式で募集し応募があった2社がプレゼンを行い、そのうちの1社であるパシフィックコンサルタンツ株式会社に滋賀県から直接依頼する形が取られています。

前述したとおり、同社では2019年の談合事件により2022年1月に関係者が逮捕され、6月に有罪判決が確定、10月から指名停止となっております。

滋賀県と同社との契約期間は2022年5月24日からなので有罪判決確定前の契約ではありますが、時系列からすると確実に逮捕の事実が知り得て、さらに、有罪の可能性がある裁判中に随意契約が行われた可能性が高いものと思われます。

そして県がパシコンと契約した日、滋賀県守山市や大津市ではパシコンは指名停止業者に指定されていました。

>>詳細:当ブログR4交通アンケートの契約は妥当?

通常、そのような状況下で、なぜ被疑者である法人と随意契約を行う必要があったのか、大いに疑問が残ります。

これは、総額12,991,000円で発注されたアンケート等事業です。

インターネットで調べると、同規模のネットアンケートであればせいぜい300万円くらいまでの金額でできるようです。いくら試算込み、郵送中心の調査であったとしても、随意契約にするにはあまりにも不適切な内容、金額のように思えます。

またこういった公共事業は通常、複数業者が入札をした上で安い業者を決定するのが普通ですが、本件は先程もお伝えした通りプロポーザル方式で企業からの提案を見て選定し、県から依頼する随意契約の形が取られています。

こういった方式をとるケースは一般的に、

「専門的知識や能力がある企業に依頼する必要があるため通常の入札ではないほうが良いケース」

​であるとされています。

しかし、アンケート構築のプロだったら、公正な結果が出ないため絶対に行わないであろうアンケートなのです。大学生でもこんなアンケートは「対象の抽出が不適当」と判断するでしょう。

いくら「目指す姿」に向けての試算が専門的知識が必要だとしても、前述のように偏りのある調査方法で、結果を誘導しながらの試算をされることに対して、大いに疑問があります。

 

■アンケートの実施期間について

アンケート実施期間は同年10月13~31日です。

集計結果は、同年11月25日の時点で日経やNHKが報道しています。

富山市の談合事件における同社の建設コンサルタント登録停止は、同年10月21日から12月19日の60日間ですから、建設コンサルタント登録停止期間中にアンケートが取られ、集計されているということです。

 

入札に参加できなくても、事業所の営業自体は制限されませんので、請け負った仕事を最後まで行うのは法的には問題はありません。

 

​しかし契約時点で談合による逮捕者を出し裁判中でありました。判決1か月前で有罪確定が濃厚であることを県は本当に解っていなかったのでしょうか?

談合疑惑による逮捕者が出ている業者を「他に代えがたい」業者として随意契約を行った理由はいったい何だったのでしょうか。

これらの経緯や、アンケートの内容、結果を客観的に見れば、県が自分たちに都合のいい方向性を導き出してくれるであろう業者に随意契約で発注し、県の事業と増税に都合のよい恣意的な調査をさせたと疑われても仕方がありません。

これら発注の経緯や違法性などについては、私たちの専門とするものではなく、この場での追及はいたしませんが、客観的に見て尋常な状態でないことは間違いありません。

「姑息な手法で結果を誘導している」

そう思われても仕方のない不誠実なアンケートであると思います。

 
​まとめ
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前項で示したとおり、疑惑のある業者によって偏りのあるアンケート調査が行われ、「県民の77%が是認」​という回答を引き出しています。

ですがそれはその設問にあるように

現状維持に必要な追加負担」

であり、あくまで是認したのは「現状維持という最低限」なのですが、滋賀県はそれ以上のことを行おうとしている様子が見えます。

2023年2月6日に発表された骨子案では、この土木コンサルタント業者によりアンケート結果を基に作られた「理想的な姿」実現のために、50~89億円の年間経費を試算しているのです。

しかし、県民の意思確認、事業総額試算のプロセスには大いに疑問があります。

滋賀県は、正しく県民の意見を聴き、正しく業者を選定し、正しく事業計画と予算を策定し、提示する義務があると思います。

また、仮にこの事業試算が正しいものとして、なぜ「増税」が必要なのでしょうか。

 

なぜ、このようないびつな調査をしてまで、ひたすら「交通税導入」ありきの政策を進めなければならないのでしょうか。

今回の試算では、滋賀県の総予算に対する1.2%、約80億円の支出です。

たった1.2%の予算のやりくりがどうしてできないのでしょうか。

分かりやすく家計レベルの金額に例えると、650万円の年収の家庭で、年間8万円の節約、もしくは、支出の組み換えを行うということになります。

決して難しいとは思えません。

もし本当に、このくらいの調整ができない、やらないとするならば、正直理解に苦しみます。

増税は、県民の自由に遣える資産を奪う行為です。

県民の自由を奪う行為です。

私たちは、この広域交通網整備事業に絶対に予算を遣うなと言っているのではありません。また、高齢者や交通弱者を救わなくてよいとも思ってはいません。

このアンケートが、明らかに行政の望む結果を作り出そうとしている意図が見えるため、誠実性の欠如、妥当性の無さに対する指摘であり、批判です。行政の、あまりにも県民を軽視した事業の進め方に対して疑義を唱えているのです。

増税することなく出来ることを、

お金をかけずに出来る案や規制緩和を検討せずに、とにかく追加負担や多くの公費が必要であると誘導され、おそらく今後も廃止されずずっと徴税され続けるであろう追加負担を、

未来の滋賀県と子供たちに対して残したくない

のです。

私たちはこのような、規制をつくり、増税を課し、国民を苦しめ続けている行政のあり方に不信感をもっています。

​国民、県民の一人ひとりがそういった状況を知り、声を上げていかなければ、この理不尽な状況はさらに悪くなるばかりなのです。

これを読むあなたが、もし私たちの考えに賛同してくださるなら、どうか周りの方にこのページを伝えていただけるととても嬉しいです。

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